インタビュー

LONG REVIEW――THE BEATNIKS 『LAST TRAIN TO EXITOWN』



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10年ぶりのTHE BEATNIKS。振り返れば、この10年の間に高橋幸宏は新しいユニット、pupaを結成して2枚のアルバムを発表したし、鈴木慶一は曽我部恵一とのコラボレートでソロ・アルバムを3枚リリースした。それぞれが新しい人間関係のなかで(若い世代との共演を通じて)新境地を拓いただけに、この10年越しの再会には同窓会的なレイドバック感はない。二人はデモテープを作らず、スタジオのセッションを通じてメロディーやリズムを見つけ出し、その場で次々とレコーディングをしていくというスピード仕上げだったらしいが、だからこそアルバムには何が飛び出してくるかわからない驚きがある。

ビートニクの作家たちと二人の音楽人生を巡るキーワードを歌詞に散りばめた〈新ビートニク宣言〉=“A Song for 4 Beats”で本作は幕を開け、エレクトロニカと60年代ロックが肩を寄せ合う“Ghost of My Dream”や、ビザールな音響にオールディーズのスウィートさが溶け込んだ“カットアップだ!我らの実存”、スライ&ザ・ファミリー・ストーンばりにファンキーな“Camisa De Chino”など、自由奔放な発想と豊かな音楽性がスリリングに交差する。でも、そこにこれ見よがしなトリッキーさはなく、さらりとスムースに聴かせるのがTHE BEATNIKSのマナーだ。権藤知彦、高田漣、堀江博久などpupaの面々のサポートも心地好くフィットするなか、ナイーヴなメロディーに寄り添う二人のハーモニーには、これぞTHE BEATNIKSなリリシズムが滲んでいる。昨日より若く、明日よりシブい魔法のアルバム。



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掲載: 2011年10月12日 18:02

更新: 2011年10月12日 18:02

文/村尾泰郎