INTERVIEW(2)――宇宙讃歌、生命讃歌、人間讃歌
宇宙讃歌、生命讃歌、人間讃歌
──インストが好きで、歌モノはあまり聴かない、ということですが、Serphの音楽はメロディー中心のものが多くて、構造的には歌モノに近いと思うんです。それはどうしてそうなったんでしょう。
「いや、歌モノは好きなんですけど、自分で作るとなると歌の才能がないもので。僕はエモーショナルな音楽が好きなんですよ。デトロイト・テクノとかって、エモーショナルで元気が出る音楽だと思うんですよね。それはやっぱりコード進行とか、ベースとかリズムの組み立て方の力で、そういうエモーショナルなものが出来ている。それを自分でやろうと――エモーショナルに訴えかけるという表現を最大限に〈音〉として出そうと思ったら、ああいうふうになったという」
──そういうエモーションを表現しようするから、ある種、感傷的なものが出てくるわけですか。
「感情的なものを伝えたいっていうよりは、脳の興奮を、僕っていう人間の身体を通して表現した結果が、SerphだったりReliqだったりしますね。毎朝起きて、コーヒー飲んで、タバコを吸うと、もう(音楽を作ることを)止められないんですよ。やんなきゃって。何もしないでいられない――何もしないで生きていられないんです。日々、虚無感との戦いというか。それで1日音楽を作って、寝る前になって、〈今日もとりあえず何かやったな〉と。その充実感を得たいからやってるんですよね。生きてる喜びとか、存在している恍惚感とか陶酔感とか、それをなんとか形にして、リピートできるようにしたい。人に伝えて共有したい。宇宙讃歌、生命讃歌、人間讃歌、って感じですね。なんか感動しやすいタチっていうか、興奮しやすいんですよね。感極まりやすい体質というか」
──メロディーはセンティメンタルでリリカルな、いわゆる泣きメロと言ってもいいようなものが多いですけど、それはどうしてだと思いますか。
「やっぱり日本で育ったから、映画にしたってアニメにしたって、そういうメロディーが入ってくるじゃないですか。久石譲さんの曲とか好きなんですけど。そういうのを聴いてきた結果ですよね、きっと」
──Serphはファースト・アルバム『accidental tourist』からスタイルが確立していて、ジャジーなリズムと、ピアノのメロディーと、ファンタスティックな音像、ってことになると思うんですが、いろんな要素が入っていますよね。
「制作しはじめてからいまに至るまで、いろんなジャンルの音楽をチェックして、それを統合したいっていう思いがすごくあるんです。そこに僕の性格が加味されて、ドリーミーになったりって感じですね」
──ひとつのジャンルやスタイルに埋没したくない、ということですか。
「そうですね。ジャンルで聴くっていう聴き方は、いまの若い子なんかはまったくしていないだろうし、できないだろうし。それで統合した結果、ポップになった、という感じですね」
──欲張りでもある?
「欲張り……というより、理想が高いと受け取っていただければ(笑)」
──じゃあ、いまはまだまだ過程ということですか。
「そうですね。これまでのリリースも、収録曲よりも候補曲がかなり多い状態から、ある程度統一感を出すような選曲でやってきたんですよね。ファースト、セカンド(2010年作『vent』)ってやっていくうちに出来てきた、Serphっていうアーティストの音楽的イメージを固めていく、ということで」
──これまでの3枚は、どれもアルバム全体でひとつの流れがあって、ストーリー的なものもあるように思えるんですが、実際はどうなんでしょう。
「メロディーとか展開を考える時のインスピレーションになっているのは――例えば友人と酒を飲んでいる時になんでもない話をしていて、無意識に言ったことが妙に引っかかっていたりとか、そういうもので。それを後になってよくよく考えてみるといろんな捉え方ができたりとかして、自分が無意識に発してしまった言葉に、自分の隠している部分が表れていたりとか。ニコニコしゃべっていても、そういう部分が目に見えないところで混ざり合ってコミュニケーションというのは成り立ってる、みたいな、そういう不思議な体験の感動を、曲のなかでなるべく表現したいんです。何気なく流してしまっている日々の一瞬一瞬が、実はものすごく大切なものなんだっていう感覚。荘厳な、美しいものなんだっていう感覚。それを曲で表したいんですね、きっと」