NICO Touches the Walls 『HUMANIA』
[ interview ]
1年に2枚のオリジナル・フル・アルバムを出すということ、しかも自他共に認める最高傑作『PASSENGER』の次の作品という、とんでもなく高いハードル超えに挑む姿勢だけでも天晴れだが、それを軽々とこなして余裕のフィニッシュを決めて見せたメンバーの姿に、もはや驚きどころか畏敬の念すら感じてしまう。音楽的にも個々の人間的にもバンド内の力学的にも、爆発的な成長を遂げている真っ最中のNICO Touches the Wallsの新作『HUMANIA』は、前作内なる衝動を突き詰めた自己確認のアルバムだとすれば、外側へ向けて解き放つ陽性のエネルギーに溢れ、このバンドがいまの日本に存在する意味と価値をリスナーに問い掛ける、大いなる野心作になったと言えるだろう。
エネルギッシュなものの集合体
――あの傑作『PASSENGER』が内省的に思えるほど、陽性のパワーが爆発したアルバムだな、というのが第一印象でした。
光村龍哉(ヴォーカル/ギター)「作ってる間はとにかく、この音を聴いてる人と深いところで共有したいという気持ちでしかなかったから、アルバムを通して、ここまでエネルギッシュなものの集合体になったのは想像以上でしたね。これまでの作品とは全然比べ物にならないパワーが詰まってるなって、自分たちでもビックリしてます。気持ちが違いましたね、ほかのアルバムを作ってる時とは」
――そもそも、どんなふうに始まってるんですか? 今回の制作は。
光村「曲が溜まったから出来た、ということではないんですよ。そもそも今年アルバムを2枚出すことになったのは、去年ずーっと曲作りをやっていて40~50曲出来ていたからこそ、〈今年は2枚イケるんじゃないか?〉と思ったのがきっかけだったんですけど、いざ取り掛かると、アルバムを作る意味や1曲1曲アレンジしていく本質的な意味を自分たちなりに見直さざるをえなくなったというか、〈ただ作ってるだけじゃ物足りない〉という気持ちが自然に出てきて。今回は『HUMANIA』というタイトルから決まっていったんですけど、それも実は、前回の『PASSENGER』のツアーが終わって翌々週ぐらいの出来事で、どういうアルバムにするべきなのか、4人でけっこう深い話を繰り返ししてから挑みましたね」
――ということは、今回は『PASSENGER』に入らなかった曲をまとめたアルバムというわけではない?
光村「最初はそのつもりだったんですけど、結局そういうことにはならかったんですよね。『PASSENGER』では衝動的な曲を選んでいったんですけど、それ以外の曲はもう少し開けた曲が多かったから、〈表と裏というイメージでアルバムが作れるかな?〉と内心思ってたんですけど、『PASSENGER』を作り終えた時の手応えとその後のツアーのなかで、さらなる共有欲みたいなものが出てきてしまって、〈これはストックを形にするだけでは収まらなさそうだぞ〉と。それでツアーが終わってからもう一度曲作りのためにスタジオに入って、結局今回のアルバムに収録されてる曲は、9割方その時に作った曲ですね」
対馬祥太郎(ドラムス)「“手をたたけ”を弾き語りでみっちゃん(光村)が持ってきた時に、まずフル(古村大介、ギター)が〈いいね!〉って反応して、俺らも〈いいね〉と言ってそこに食らいついたということが、『HUMANIA』のスタート地点だったんですよね。そこから、お互いに〈これがいい〉と思うものにひたすら食らいついていった感じがします」
古村「みっちゃんが『HUMANIA』というテーマを出してきた時のジャスト感がすごいあって、いまの俺らが向かう目標としてぴったりだという思いはありましたね。曲調もアレンジも、堀り下げれば掘り下げるほど深いところへ突き抜けることができるということがわかったし、もっと伝わることにも気付いたし、それは『HUMANIA』というテーマがあったからこそだと思います。歌詞も、(ベースの坂倉)心悟さんが書くことで新しい風景が見えてきて、演奏することにもそれが影響するんだなって思いました」