INTERVIEW(4)――ぶつかり合うことで見えた可能性
ぶつかり合うことで見えた可能性
――そうかと思えば、初々しさとは真逆のハードな“業々”みたいな曲もある。これ、いちばんノリノリだったのは誰ですか。
古村「これは……ドラム?」
対馬「俺かな~」
光村「これはやっぱりドラムは良かったですね。すでに知ってました、この感じを(笑)。こういう時はどういうオカズが合うのかというのも、何の迷いもなく出してきやがる(笑)感じがあったので、安心してそのうえに歪んだギターを乗っけていけましたね」
――これは90年代のメタルとかラウド・ロックとか、あのあたりのイメージで?
光村「これはですね、今年ずっと僕らのなかでリンプ・ビズキット・ブームがきてるんですけども、それですね(笑)。久しぶりの新譜が出たというのもデカかったんですけど」
坂倉「でも、もっぱら過去のアルバムだったよね」
光村「『Significant Other』(99年)。あの感覚がけっこうツボで、スタジオでリンプごっことか、たまーに起こるんですよ」
――山下達郎とリンプ・ビズキットのブームが同時にきてるバンドなんて、なかなかいないですよ(笑)。ほかにも“demon(is there?)”なんて、ドラマティックでメランコリックなUKロック臭さを感じたし。
光村「ヴァーヴとか、俺とか坂倉のルーツにはあるから。ああいう音の広がりを追求したりしてましたね」
古村「いろんなジャンルがあるぶん、今回はライヴのことをほとんど考えてないです。考えないと、こうなるんです」
光村「ライヴは本当に、それこそ1曲1曲、衣装とカツラを替えないといけないのかなと。やらないですけど(笑)」
対馬「やってもいい覚悟は、俺はあるよ」
光村「スネアを替えるんじゃなくて、カツラを替えるという(笑)」
――最高です(笑)! 何かわかってきましたよ、このアルバムの異様に強いパワーの源が。それぞれの精神状態の良さがものすごく関係してますね。
光村「今年のこの4人には、遠慮のなさとか図々しさみたいなものがみんなにあって、そのぶつかり合いで起きた化学反応だなということはすごく思ってます。だからこそ見えた可能性がたくさんあったんですよね。今回のアルバムもそうですけど、これから先、まだまだいろいろな曲を書いていくなかで、もっともっとバンドでやれることはあるんだなと思わせてくれたし、人間力っていま本当に大事だなということを改めて思いました。音楽は誰のものかというと、人が聴くものだから、人に届くことがいちばん正解なんだろうし、そこにおいて人間力のヴォルテージの高いものがいまはきっと大事なんだろうなと思いますね。だからこそ、夢見がちなことを歌うというよりは、いま自分たちが思っているこの瞬間をどれだけ強烈に切り取れるかが、どの曲も大事でしたね」
――大いなる人生讃歌だと思いますよ。歌詞で言うと、“業々”の〈病んでる場合じゃない、悩んでる場合じゃない、塞いでる場合じゃない〉のところですよね。これを言われたら、もう頷くしかないですよ。
光村「ありがとうございます。でもそうやってクリエイトすることが楽しいことの反面、これまで以上に〈自分たちの本質にあるのものは何なんだ?〉って掘っていったから、もうこれ以上何も出ないというくらい空っぽになっちゃって。人と芯の部分でコミュニケーションを取るのってすごいエネルギーがいることなんだ、という大変さも同時にわかったし、自分のなかでも改めて〈音楽とは? 自分とは?〉というところを突き詰めて考えられたからこそ、達成感はすごくありますね」