INTERVIEW(4)――コンパクトで、良い音楽
コンパクトで、良い音楽
――すいません、口が悪くて(笑)。そして“Fog”は、録った時点では最新の楽曲だったということですが。この曲にはテーマはありますか?
Tomoya「このEPでは自分たちの芯の部分、骨の部分を剥き出しにして2曲続けているんですけど、シングルみたいな短いCDのなかで4つ打ちの曲を並べて入れるっていうことは、ロック・バンドとしては一般的に、あまりやらないと思うんですね。俺たちはさり気なくそういうことをしたかったっていうのと、あとは〈真逆のこともできる〉っていうことを証明したかったところがあって。ノイジーなギターがなくたって、ドラマティックな――例えば5分を超えるシンフォニックな曲にしなくたって、コンパクトに、純粋に良い音楽を作れるっていうことの証明としてどうしてもこれを入れたい、っていう気持ちがありました」
――音数は絞るほうが難しいかと思うんですけど。
Tomoya「そこに特化したかったので、俺はこの曲でギターを弾いてないんですね。鍵盤だけ弾いて、ベースとドラムと、その上に歌を乗せていて。ただ、ラッセルもいるので結果的にギターは入ってるんですけど、自分たちのアプローチとしては、シューゲイズ・ギターばっかり弾いてる俺がウーリッツァーしか弾かないっていう極端な曲をここに入れられたことが満足です」
――この曲にもラッセルさんが関わってるんですか?
Tomoya「プロデュース的なものではないんですけどね。“Decadence”はいっしょにレコーディングで一発録りをして、アレンジにも関わってるんですけど、“Fog”は単純にギターを入れてもらっただけです。ラッセルといっしょにやったライヴで、この曲も演奏していて」
Sally「そのときにラッセルからギターを入れたいっていう申し出があったので、喜んで、って」
――“Decadence”のギターの掛け合いもラッセルさんの発案ですよね?
Tomoya「そうですね。あそこでギターが崩壊するようなものを作ってきてくれて、〈これどうやって再現したらいいのかわからない〉って言ったら、〈掛け合いみたいにしたらどうだろう?〉って言ってくれて、〈じゃあ3人でやろうぜ〉って発展してったんですけど(笑)。“Fog”のギターも絶妙に入れてくれてて。最高のセンスですよね」
――歌詞は何かテーマがありました?
Sally「これだけシンプルな曲なので、強すぎるメッセージ性とか、押し付けがましい自分の気持ちとかじゃないよね、と思って……かつ、みんなの心のどこかにあるだろう言葉じゃないと届くわけがないっていうのもあったので、そのギリギリのラインがここにあるなと思います。夜、寝る前、静かにこういうことを考える瞬間って、たぶん一生のうちに一日はあると思うんですよ」
――〈眠れよ〉っていう言葉があるからかもしれないですけど、ちょっと子守唄的な……穏やかな安心感を与えてくれる歌詞ですね。
Sally「ああ、それはありますね。かと言って、〈私が癒してあげる〉っていうのもおこがましい楽曲だと思ったんです。だから、これぐらいの言葉の置き方っていうか、そのバランスを考えて書いてます」
骨を出したからには
――あとは、いつものようにリミックスが3曲入ってますけど、まずはアニマル・コレクティヴの“Decadence”。これはトライバル・サイケな……聴いて即〈アニマル・コレクティヴだね〉ってわかるほどのアニコレ感で(笑)。
Tomoya「そうなんですよ。もはやアニマル・コレクティヴの新曲でしたね、ホントに(笑)」
Sally「原始の叫びみたいな(笑)。すごく嬉しかったです。“Decadence”のこんな姿が見られるなんて、って(笑)」
――そして“My doll”はDJ Uppercutさん。
Tomoya「超お気に入りです。テクノとダブステップを行き来する感じで」
Sally「原曲ではバンドでできる最高のバキバキをやったつもりなんですけど、それをより研ぎ澄ませてくれたというか」
Tomoya「この曲の持つ棘とかゴスっぽさとかを、クラブ・ヴァージョンでね」
――クラブものも聴きます?
Tomoya「はい。めちゃくちゃ定番だと思うんですけど、スクリームの作ったダブステップは、自分にすごく影響を与えてるような気がしますね。〈今後、そういう曲を作りたい~〉って。バンドでダブステップをやってみたいんですよね。レディオヘッドとかジェイムズ・ブレイクとかはすごく削ぎ落とされてて、俺のなかではチャラくないダブステップなんですけど(笑)、でもチャラいダブステップも好きだったりするんで。リズムとの入り方がおもしろいなあと思いますね。コーンがスクリレックスと作ったハードコア・ダブステップみたいなのもすごく良かったし」
――コーンの最新作は格好良かったですね。あと最後の“Fog”はzAkさんで。これはほぼノンビートでいくのかなーと思ったら、ジワジワと疾走してくるという。
Tomoya「ええ、ええ、ええ。正気じゃないなと思いましたね。最高だわ、って。〈狂ってる! この人やっぱすごい!〉って」
Sally「〈この世界観!〉って。最初はそれしか言葉が出なくて。ホントにビックリしましたね(笑)」
――そして、先ほどチラリとお話に出ましたが、どうやらバンドはアルバムに向かっているムードですね。
Tomoya「そうですね。ここで骨を出したからにはもうアルバムしか残ってないっていうような感覚なんで、このEPは超重要なんですよ。“My doll”のパンキッシュな感じとかはアルバムにも絶対通じるっていうか、そのまま流れていける感じなので。だからまずはこのEPを聴いてもらわないと」
――上手いなあ(笑)。
Sally「でもホントなんですよ(笑)。今後のアルバムをもっと思いっきり楽しめるようになると思うので、このEPはマストで聴いてもらいたいです!」