インタビュー

LONG REVIEW――Heavenstamp 『Decadence-E.P.+REMIXES』



振り切ったポップセンス



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昨年のツアーでもアンコールに披露していたキラー・チューン“Decadence”を表題曲に、いよいよ『Decadence-E.P.+REMIXES』をリリース。これまでもオリジナルの4曲にリミックス3曲という構成でEPを発表してきた彼らだが、今回のリミキサーには、なんとアニマル・コレクティヴが参加! デビュー・アルバムをリリース前の新人バンドとは思えぬ展開に目を丸くしたが、それこそ彼らの共同プロデュースを務めているラッセル・リサックが所属するブロック・パーティも含め、UKのロック・シーンにはこういうハイプな登場の仕方をするバンドって結構多いよな、とも思ったり。そういう面でも、日本という枠には収まらないワールドワイドなイメージを喚起するバンドである。

で、肝心の曲のほうは、彼らが掲げてきたポスト・パンクの鋭角感とダンサブルさ、メインストリームのJ-Popとしても通用するメロディーの射程の広さを突き詰めたようなテイスト。Aメロの〈君が君でいられないから〉で徐々に助走をつけて、サビ直前の〈ねぇ〉で踏み切り、〈いつかそれは世界を救うはずなのに〉というサビに飛び込んでいく解放感に、彼らならではの振り切ったポップセンスが宿っている。

バンドを結成して最初に作ったという、荒々しい初期衝動の4つ打ちギター・ロック“My doll”に、ゆったりと沈み込むようなベッドルーム・ポップの“Fog”と、モロにシューゲイザーなインタールードも含む4曲のバランスも流石。かなり密度の濃いパッケージになっている。



Decadence-Animal Collective remix



元曲のダンサブルなギターとくっきりとしたメロディという要素を全部反転させたような挑戦的リミックス。深いリヴァーブをかけまくったギター、逆回転のヴォーカルと不定形のリズムを駆使した、アニマル・コレクティヴらしい実験的な仕上がりになっている。奇妙ながらもポップな人懐っこさを失っていないのは流石。

My doll-DJ Uppercut remix



宇多田ヒカルのツアーDJを務めたことで注目を集め、鎮座DOPNESSなどコラボ仕事も多いDJ Uppercut。数々のリミックス・ワークも手掛ける彼だが、今回はマッシヴなエレクトロ・テイストで仕上げている。原曲の分厚いギター・サウンドをバウンシーなシンセに置き換え、フロア・フレンドリーに再構築。バトルDJ仕込みのセンスも窺える。

Fog-zAk remix



フィッシュマンズを手掛けたエンジニアとして知られるダブの巨匠、zAkがリミックス。原曲にもまさにフィッシュマンズあたりに繋がるトリッピーでメロディアスなテイストがあるから、この人選はぴったりかも。リズムレスなイントロから、どんどん幽幻の世界に引き込まれていく。曲後半で上り詰めるサイケデリックな昂揚感も抜群。

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掲載: 2012年03月28日 18:00

更新: 2012年03月28日 18:00

文/柴 那典