INTERVIEW(2)――世界中の人の体験談
世界中の人の体験談
――歌詞は、最初に書いた段階から変わってます?
Tomoya「基本的にそのまんまですね」
――そうすると、Sallyさんがご自分で書いたもの以外の歌詞を歌うのは、このバンドでは初めて?
Sally「“Stand by you”のサビとかはTomoyaの発案だったりするんですけど、丸々1曲っていうのは初めてで。なんですけど、私が歌っても全然違和感がないというか、自然と歌えるんですよね(笑)。それはたぶん歌詞がすごく曲に寄り添っているというか、この曲にはこの歌詞しかあてはまらないというフィット感からだと思うんです……だから私も歌えるし、男性も女性も関係なく届くんじゃないかなって」
Tomoya「うん。一人称が〈俺ら〉だったら歌えなかったかもしれないね。〈僕ら〉だから歌えたのかも」
Sally「そうかもね(笑)」
――しかも、〈僕〉じゃなくて〈僕ら〉なんですね。
Tomoya「そうなんですよね。俺もいま思いました」
――この歌詞には、Tomoyaさんご自身の心境が反映されてるわけですよね?
Tomoya「そうですね……ええ」
――それで、どうして〈僕ら〉だったんでしょうね?
Tomoya「この曲を作ったときっていうのは……その時点ではもう何年か経ってたと思うんですけど、〈9.11〉のショックは少なからず影響してるんじゃないかなって思います。この曲に限らず、どの楽曲の歌詞も、ちょっと怯えてる気がするんですけど……その不安な人たちのうちの一人としての〈僕ら〉って。そうやって世界を見渡してる人になってるんだと思います、この曲のなかでは(笑)」
――怯えるっていうのは、何に?
Tomoya「対、外のことですかね」
――自分と、自分以外のすべて?
Tomoya「究極そうかもしれないですね。でも、そういう人がいっぱいいるんだろうなっていう意識からの〈僕ら〉なのかもしれないですね。みんな不安だろうし、怯えてるだろうし……その一員としての歌みたいな感じですかね」
Sally「ああ、だから私も含まれてるみたいな――代弁みたいな感じで歌えてるのかもしれないですね、ひょっとしたら」
Tomoya「自分の体験談でもあるけど、〈9.11〉のショックっていうのは世界中の人の体験談だと思いますしね。そのことをテーマに作った曲ではないですけど、でも……」
――〈9.11〉をきっかけに漠然とした不安を抱えてしまった?
Tomoya「……そういうことだと思いますね。〈9.11〉が起こった直後に変わったというよりは、その前から漠然とした……究極、第三次世界大戦が近い将来起こるんじゃないかなって思うような不安感があって。そういう掻き乱されてる時期にああいう映像を見たことによって、やっぱり怖いっていう気持ちが表に出たんじゃないかなと。でも〈LOVELESS〉だからしょうがないっていう、そういう折り合いの付け方をしていたんですね、きっと」
いちばん根っこの、骨の部分
――では続いての“My doll”ですけども、確かこれもバンドの最初期ぐらいに出来た曲で、〈尖りすぎてる〉っておっしゃっていたような(笑)。
Tomoya「(笑)Heavenstampのために、俺が初めて作った曲で。“Decadence”を除けば全部Heavenstampのために書き下ろしてるんですけど、これがその第1曲目です」
――〈キレッキレのディスコ・パンクを作ってやるぞ!〉みたいな。
Tomoya「はい(笑)。逆に言ったら、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインを観てバンドを組んだからこそ、シューゲイズはやらないっていうことの表明でもある曲で。まあ結果、シューゲイズはやってるんですけどね(笑)。〈マイブラのライヴを観てこのバンドが出来た〉ってことを世間は知らないかもしれないけど、自分自身も裏切りたい。そういう自分たちの楽しみ方も反映されてるような感じですね」
――歪んだギターとか、音の厚みみたいなものはありますね。
Tomoya「そうですね。歪み方はパンクに、ガッシャガシャにしてます」
――この曲については、何か妄想がありましたよね?
Tomoya「あります、もちろん(笑)。妄想は……(〈フジロック〉の)〈RED MARQUEE〉ですよ。〈RED MARQUEE〉にフラッと入ったら知らない新人が出てきて、全然キャッチーでもない曲をワシャワシャ演奏してて、〈何こいつら? 尖ってんなー〉っていうふうに俺が思うであろうバンドの曲、っていうテーマですね。キャッチーじゃないことに美学があるみたいな感じです」
――歌もずいぶんなはすっぱさで。
Sally「はい。斬り捨て、噛み付き、みたいな感じで(笑)」
Tomoya「バンドを組んで最初のライヴの1曲目で演った曲だったりするので、リリースできるのはホントに感慨深いところがありますね」
――今回のEPは、ホントにこれまで温存してた楽曲が並んでいると言いますか。
Tomoya「時系列で言うとまさにいちばん根っこの、骨の部分なんですね。でも、だからこそ“Fog”っていう、このEPを制作していた時点での最新曲を入れていて」
――“My doll”はゴリゴリに歪んだスラップ・ベースも入っていたりするので、ともかく尖ってますよね。
Tomoya「そうですね、それだけでした(笑)。一発録りで、とにかく勢いを入れようと。だから、たぶん俺、みんなに〈上手く演奏しないでね〉って言ったと思うんですね。上手く演らなくていいから、どれだけ尖がるかだから、って」