インタビュー

LONG REVIEW――[Champagne]『Schwarzenegger』

掲載: 2012年04月04日 18:00

更新: 2012年04月04日 18:00



より視野が広がった力強い作品



[Champagne]_J

[Champagne]——洒落たバンド名だ。しかしそのスマートな字面からは少し意外なほど、彼らの内には熱い血潮がたぎっている。幼少期をシリアで過ごしたというヴォーカリストの川上洋平が流暢な英語で歌う、時に大言壮語とも言えそうな強い言葉は、時に音楽の魅力を謳い、時に世界と自分の関係性にカウンターを喰らわせる。なぜなら、彼は音楽の力でもって自分の(と同時に聴き手の)世界の見え方を変えようとしているから。そして細かくシンコペートするアークティック・モンキーズ以降のソリッドなビート感覚に、サウンド全体では90年代以降のブリティッシュな志向を持つ——それがこれまでの彼らの印象だ。

このたび、恒例の(?)ナンセンスな表題も彼ららしいニュー・アルバム『Schwarzenegger』が完成した。冒頭の“The”はアンビエントでドリーミーなシンセから一転、ポリリズムを含む鋭いビートが堰を切って押し寄せるインストだ。続いて“El Camino”では静と動を大胆に転換するアレンジを披露し、“Waitress, Waitress!”はスパニッシュなギターが先導するアッパー・チューンに。今回も随所で予測不可能な展開を見せる、彼ららしいひねり(ひねくれ方?)が冴えている。

その一方で、驚くほど美しいメロディーにアコースティック・ギターとストリングスを添えた、初期オアシスの名曲群にも通じるミディアム“Spy”や、フォーキーでユーモラスな“12/26以降の年末ソング”など、穏やかな表情を見せる曲があるし、もちろん持ち味のダイナミックなギター・サウンドを鳴らす曲も多い。

色とりどりな音楽性を採り入れて、視野の広がった本作。しかし川上の綴る歌詞(いつになく日本語詞が多い!)では傷心や迷い、喪失感も顔を覗かせている。そういった心境に至った理由はさまざまだろうが、彼らはそれすらも表現のエネルギーに、なおも自分たちのやるべきことを貫いていくだろう。この作品の力強さが、それを確信させてくれる。


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文/鬼頭隆生