インタビュー

Turntable Films 『Yellow Yesterday』



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[ interview ]

日本のオルタナ・カントリー――そう乱暴に言うとやや抵抗を感じるリスナーもいるかもしれないが、京都のSECOND ROYALからのリリースとなるTurntable Filmsのファースト・フル・アルバム『Yellow Yesterday』には、例えば次が見えないどん底状態だったウィルコがジム・オルークと組んで作った『Yankee Hotel Foxtrot』や、生楽器にもエレクトロニクスにも躊躇のないスフィアン・スティーヴンスが自在に物語を編んだ『Michigan』あたりにも似た、フォーキーだけど先進的な感覚が宿っているように思える。この2月にキーボードの船田のぞみが脱退し、井上陽介(ヴォーカル/ギター)、谷健人(ベース)、田村夏季(ドラムス)による3人組となったが、トリオとなったことで演奏のアンサンブルはシャープさを増し、メロディーと歌によりはっきりとフォーカスされたような印象。オーソドックスなスタイルが却ってこのバンドのモティヴェーションの高さと潜在的なポップ指向を引き出した格好になっているのもいい。

結成自体は2008年だが、リーダーの井上自身は10年以上前からリスナーとして音楽に触れてきた。メンバー全員、ブルースやフォークの伝統渦巻く京都出身で京都在住。実は10代の頃にオールド・ロックやブルースのイロハを徹底的に叩き込んだという実力派のリーダー・井上は、普段は地元の人気レコード・ショップに勤めるマニアックな音楽ファンでもある。仲間との結成から、手応えを掴むに至った現在までの紆余曲折を語ってもらった。



カントリーで、フォーキーで、ポップ



――結成した当初はどのような指向だったのですか?

「中学とか高校でも音楽を聴いていたし、バンドっぽいこともやっていたんですけど、大学入る頃、いまのメンバーたちと何となく始めたって頃は、オールマン・ブラザーズ・バンドみたいなものが好きでしたね。近くにいた楽器屋のおっちゃんから60年代や70年代のロックの名盤を薦められるままに聴いて好きになったんです。だから、当時は若いアーティストでもベン・ハーパーとかレイ・ラモンターニュとかフィッシュが好きでした。渋いですよね(笑)」

――若いのにルーツ音楽好きだったと。

「そうなんです。それでオルタナ・カントリーとかも好きになって……ウィルコとかライアン・アダムスとか……ちょうど『オー・ブラザー!』のサントラが話題になった時期でした。それで、僕らもああいう感じの音楽をやりたいなあって思って始めたんです。小さい頃に近所のおっちゃんとかに聴かせられた古いブルース・ロックみたいなものと、トータスやジム・オルークみたいな当時のシカゴ音響系との間をいくような感じに聴こえたんですよね。ルーツはしっかりしてるけど、現代的だしって感じで。しかも、例えばウィルコのジェフ・トゥイーディーとかってメロディーはポップでしょ? ベックもカントリーで、フォーキーな曲を書きますけど、すごくポップじゃないですか。そういう感覚がすごく羨ましかったんですよね。で、自分もそういう感覚でやってみようって思ったんです。そもそもTurntable Filmsの誕生ってそこが発端でしたね」


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掲載: 2012年04月11日 18:00

更新: 2012年04月11日 18:00

インタヴュー・文/岡村詩野