INTERVIEW(2)――外側から見たアメリカ
外側から見たアメリカ
――オルタナ・カントリーの多くは、その土地の匂いや風景がかなりドロリとしたタッチで反映されているでしょう? そこに日本人の自分たちがアプローチするということの難しさは実感しましたか?
「それはありましたね。僕、日本でのほほんと生きてるんで、結局はこういうところには行けないんだろうなあって思っていたんです。この深みみたいなのは出せないんじゃないかなあって。でも、京都で憧れ持ってやってるのって、例えばスーパー・ファーリー・アニマルズもアメリカに憧れてカントリーっぽい作品を出したりのと同じなんじゃないかな?って思えてきたんです。そうやって他の国から見たアメリカというのもおもしろいんじゃないかなって思えてきたんですよね。つまり、日本に住んでる僕らにもできるんじゃないか、京都だったらなおさらその要素がどこかに出ておもしろくなるかもしれないんじゃないか、アイデンティティーとしてはすごくおもしろくなり得るんじゃないかって思えてきたんです。そしたら作る曲も徐々に変わってきて……」
――曲作りも自由になれたと。
「そうなんです。真似とかじゃなくて、自分たちのやりたいことをそのまま出せるようになってきたんです。だって、ブルースを日本人が真似してギター弾いても、どこか胡散臭いっていうか、ちょっとそれはちゃうやろ?って思うことが多いんですよ。もちろん、素晴らしい人もいるんですよ。でも、どうしても表面だけなぞると胡散臭くなる。それだけにはなりたくないなって考えながら曲を作ってきたんです。それを、今回のアルバムを作る前に、手応えとして掴んだ感じがしたんですよね。そういう音の趣味がやっと自分たちの血肉になったというか、自分たちに引き寄せることができた感じがしたんです。今回のアルバムの曲で言ったら“10 Days Plus One”とか最後の2曲とかは、ホントに当時自分が好きでイメージしていた音楽に近付けたような感じがしましたね。それって、スタイルだけを似せるとかじゃなくて、見た目は少し違っても、感覚としてちゃんと理解して作れるようになったって実感なんです」
――ええ。パッと聴いた限りではオルタナ・カントリーっぽい感じがしない。別にスライド・ギターとかバンジョーが入っているわけでもないし。でも、あくまで感覚としてと、京都発のルーツ・ポップ・ミュージックに仕上がっている印象なんですよね。
「そう言ってもらえるととても嬉しいですね。正直サウンド作りはすごく難しかったんですよ。ウィルコのような作品の音質を出すのはやっぱりなかなか難しいんですよね。でも、演奏するなかから出てくる匂いみたいなものをそのまま録音すればいいかなって思えて。結局、いかに自分たちが好きな音楽を身に付けたかということが大きく左右するんですよね」
――表面的な影響よりも、その音楽の本質を理解するまでに時間がかかったということですね。
「理解……そうですね。でも、こういうことがちゃんとやれてる日本のバンドになりたいんですよね」
――ある程度キャリアを重ねればおのずとできてくるけど、若いバンドだとなかなか一朝一夕にはいかないものですからね。
「そう。僕らもまだまだ途上なんですよ。まだこれが正式なファースト・アルバムだし。でも、最初になんとなくバンドを始めた時に比べたら、本当に意識が変わりましたね。いまは曲を作るところから、すごく時間かけて丁寧にやってますから」
――曲作りはどのように?
「基本僕がアコギを家で弾きながら作るんですけど、ネタの断片をICレコーダーとかで録って、そこから印象に残るメロディーを抽出して、職場に行くまでの自転車に乗っているときとかに(笑)頭のなかでまとめていくって感じです。僕、パソコンで音楽作ったことないから、やり方としてはすごくアナログですよね。だから好きな音楽を自分のモノにするまでに10年くらい時間がかかったんだと思います(笑)。でも、バンド・メンバーは……特にベースの谷なんかはすごく音楽の趣味も近くて、理解もしてくれているから、恵まれてるなと思いますね。そのベースのヤツも最初14歳くらいの頃はメタリカとかが好きだったんですけど、いまでは同じ理解を共有できるようになりました。で、ドラムの田村はジャズとかエレクトロニカも聴くみたいだし……みんな一見バラバラですけど共通する部分があるというか、同じ感覚を3人で分かち合えるんですよね」