INTERVIEW(2)——歌謡曲への興味を投影した大人のポップス
歌謡曲への興味を投影した大人のポップス
――そういう意味では、今回のシングル“TRAP”が日本での活動再開の出発点になると思います。どういうところから制作が始まったんでしょうか。
「曲が上がる前にアートワークを先に進めてました。フランスに行って感じたのは、むしろ日本の良さなんですよね。それで日本的な要素もアートワークに入れ込みたいなと思ったんですけど、ありがちなものは避けつつ何がいいかなと考えていて」
――いかにもな日本趣味は避けたかった?
「そうですね。和柄とか、着物とかとは違うクールでファッショナブルなものにしたかった。で、ハマってた折り紙をペーパー・ドレスに採り入れられないかなと思って、こういうヴィジュアルになりました」
――いつもヴィジュアルのほうが先なんですか?
「基本的にはそうですね。タイトルとアートワークをいっしょに決めるんです。アートワークが浮かんだ時に、タイトルは大文字の英語でこういうフォントで、これくらいの文字数が良いな……みたいに考えます」
――タイトル曲の“TRAP”は、やはり岡村靖幸さんが作曲を手掛けたことが注目されるところかなと。
「まずデビュー10周年なので、それに相応しいことをやりたいなと思ったら、デビュー曲をお願いした岡村さんが浮かんで」
――岡村さんとはデビュー曲の“スキャンティ ブルース”以来、10年ぶりのコラボですもんね。
「いま、歌謡曲の言葉遣いだったりメロディーに興味があって。それでシングルは歌謡曲っぽいものでダンサブルなものを作りたいということで、岡村さんにお願いしました」
――確かに歌謡曲っぽいと言うか、岡村さん的としか言いようのないメロディーです。
「歌ってる間にノリのアイデアが浮かんできて、ファンキーな感じにしようとか、ディスコっぽくすると良いかな、とか。今回レコーディングして、デビュー曲の時もそうだったなってフッと思い出しました。あと、ちょっとひねくれた歌詞を乗せたくなるんですよね」
――MEGさんの詞は、岡村さん独特の節回しやリズム感を巧みに乗りこなしてるなあと。
「ありがとうございます(笑)。大沢(伸一)さんのアレンジも大きいです。聴いているなかで、イメージが固まった感じです」
――アレンジを大沢伸一さんにオファーしたのはどういうアイデアからですか?
「長く知っていて〈いっしょに曲を作りたい〉と思いつつ、まだ実現してない先輩がたくさんいて、そのひとりでもあり。自分のなかでエレクトロ・ポップがひと段落していて、興味が歌謡曲に向かったところがあるんですけど、そういうことにもある意味〈共感できる〉って言ってくださって。出来上がって、本当にお願いして良かったと思いました」
――大沢さんの手掛けたサウンドは、エレクトロニックなんだけど、そこまでビートを押し出してない。『MAVERICK』のポップス志向からの流れを受け継ぎつつ、確実にネクスト・ステップを感じさせて、すごくフレッシュでした。
「いろんなバランスで成り立ってる曲だと思うんですけど、おしゃれなクラブ・ミュージックってだけじゃなくて、ちゃんとポップスだから好きだなと。フレッシュって言ってもらえるとすごく嬉しいですね。自分でもそう感じるんですよ」
――この抑制の効いた感じが大人っぽい。
「〈イイ歳のオンナ〉みたいなイメージでまとめました(笑)。少女的なものも良いんですけど、いまはもうちょっと好みに寄ってるというか、大人っぽいものに惹かれてるんです」
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