LONG REVIEW――MEG “TRAP”
最初に言っておくと、この先にやがて見えてくるのであろうオリジナル・アルバムは絶対にヤバいはず……なんて先走りも許してほしくなるニュー・シングルです。まずは、デビュー曲“スキャンティ ブルース”から10年ぶりに岡村靖幸をコンポーザーに迎えた“TRAP”。ここではブレイクボット“Baby I'm Yours”を即座に連想させる艶っぽいディスコ・ビートを、大沢伸一がマイルドに仕立てています。
同趣向の楽曲にはKIDO YOJIやSaori@destinyも取り組んでいたものですが、岡村の爬虫類的なメロディーがここに仕掛けたのはアダルトなぬめり。詞はMEGによるものながら、〈ウーベイベー、エスコートオーケー、シングラララ♪〉なんて岡村ちゃんばりのはしたない言葉がその旋律のボディーラインと一体化しているのです。たどたどしい舌遣いがセンシュアルだった“スキャンティ ブルース”と比べても、これは最高に刺激的で洗練されたマッチングじゃないでしょうか。
一方、カップリングの“セブンティーン・ランデヴー”は、浮遊感たっぷりの耽美チューンで、高岡早紀のヨーロピアン3部作に通じなくもないというか、ももクロ仕事などでも名高いNARASAKIが懐の深さを見せつけた出来がとにかく素晴らしいです。穏やかに揺れるアレンジにはラヴァーズの“イケナイコトカイ”を思い出したりもしましたが、ここでも蠱惑的な雰囲気が秘密めかした歌世界の隅々にまで広げられていて、ある意味“TRAP”以上のトラップになるかもしれません。やはり、ガーリーなアイコンである以前の危なっかしい猫のようだった彼女を思い出したりもします。
……そんな感じで、いささか強引にファースト・アルバム『room girl』の頃の彼女に引きつけながら聴いてはみたものの、安直な原点回帰という意味ではなく、文字通りのリフレッシュを経て現れた今回の2曲には、盤石だったここ数年のサウンドを忘れさせてしまうほどのスリルがあります。つまり、10年前に〈女の子でいたい/あたしはまだどれくらい/女の子でいられるだろう〉と歌ったルームガールは、“私がオバさんになっても”と歌っても違和感がないくらいに、いまもなお女の子でいるということです。それもたまらなく厄介な罠を仕掛けていて、わかってはいるのに何度も手招きしてくるみたいな!