インタビュー

ニュー・シングル+トリビュート盤を一挙に解説(3)!



love letter / Pay money To my Pain



国内外で活動する超弩級のラウド・ロック・バンドは、全16曲の大作となった95年の『Six/Nine』から自身のスタイルを貫くかの如く全編英詞曲をピックアップ。ヘヴィーでグラマラスな原曲のBPMを上げ、スクリームを撒き散らしながら鋼のようなグルーヴで駆け抜ける。マッチョイズムとそこはかとない色気が同居した、非常に〈らしい〉仕上がりだ。



ICONOCLASM / D’ERLANGER



実験性を強めることで『狂った太陽』へのカウントダウンを開始した89年作『TABOO』。その幕開けを禍々しく飾ったポスト・パンク・ナンバーを、同じ80年代デビュー組のカリスマが再編。破壊的なエネルギーと耳にこびり付くポップネスをワンコードで体現した同曲のインパクトを受け継ぎつつ、雄弁なドラムを中心にじわじわと狂気を増幅させていく手腕は流石だ。



EMPTY GIRL / N’夙川BOYS



メジャーからの初アルバムの1曲目。BUCK-TICKのフレッシュなポップ・サイドを堪能できる同曲をキュートに再構築したのは男女ヴォーカルを擁するベースレス・トリオ。微妙にもたれるドラムも、ノーウェイヴ調と言えなくもないギターもなぜか異様にキャッチーで、破綻スレスレのバンド・アンサンブルを持ち前のパンク魂でやり切ってしまうところが凄い(全部褒め言葉)。リンダ嬢の〈ワァ~オ!!〉にも痺れる!



エリーゼのために / THE LOWBROWS



25周年イヤーのキックオフとなったシングルをリミックスしたのは、トレンドに対する嗅覚が抜群の男女トラックメイカー・デュオ。ミニマルなリフ主体のセクシーなダンス・ロックをビキビキのシンセベースがうねるアッパーなエレクトロ・ハウスへ変換。ビートをファットに増強しながらもレイヴィーに開けるサビにピークを持ってきており、メロディーをキッチリと活かした仕様だ。



SEXUAL×××××! / acid android



軽やかに走るブレイクビーツ上をたおやかなピアノとストリングス、繊細な歌が優美に彩るポスト・クラシカル風味の“SEXUAL×××××!”を披露したのは、L’Arc~en~Cielのドラマーによるソロ・ユニット。今回のトリビュート盤のなかではもっともメロディー・コンシャスなアプローチとなっており、長くこの曲に親しんでいるファンにも新鮮に響くのでは?



AA= / M・A・D



盟友のAA=は、テクノ色を強めてシングル・カットされた(のちに『殺シノ調べ This is NOT Greatest Hits』でセルフ・カヴァーも)“M・A・D”を獰猛なサイバー・パンクにリメイク。吹き荒れるデジタル・ノイズと無機質な加工声が圧巻の勢いで突っ走るなか、ぽとりと落とし込まれる鍵盤と生声パートが楽曲のコアを引き立たせている。そのため、暴力的な音塊に晒されたあとに残るのは、一抹のセンティメンタリズム。

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掲載: 2012年07月04日 18:01

更新: 2012年07月04日 18:01

文/土田真弓