THE CHERRY COKE$ 『BLACK REVENGE』
[ interview ]
パンク、メタル、グラインドコアと、スカ、ロカビリー、アイリッシュを含むトラッド・ミュージックなどをグツグツと煮込み、怒涛の疾走感で鳴らす痛快盤が届いた。THE CHERRY COKE$の通算5枚目にあたるメジャー・デビュー・アルバム『BLACK REVENGE』は、1曲1曲のクォリティーが本当に高い! 間違いなく彼らにとっての最高傑作と言える出来栄えだ。民族楽器を採り入れたバンド編成に、2人の女性メンバーも歌とコーラスで大活躍。今年で結成13年目を迎えるバンドの歴史を踏まえつつ、今作の魅力をたっぷりと語ってもらった。
血が騒ぐ音楽
――bounceには初登場になるので、基本的なことから訊かせてください。99年の結成当時は、どんな音楽をやろうと?
KATSUO(ヴォーカル)「もともとベースのHIROMITSUがメロコア・バンドをやってて、自分のバンドを組みたいという動機から始まったんですよ。ハードコア+スカというか、スカコアをやりたくてスタートしました。最初はギター、ベース、ドラム、サックスだけだったんですよ。で、曲を作るHIROMITSUはパンクや映画音楽、僕だったらオールディーズやロカビリー、MASAYAはロックやメタルが好きで。個々でいまの音楽に繋がるルーツを持ってて、どんどん形が変わっていった感じですね」
――最初はいわゆるスカコアから始まったんですね。
KATSUO「そうですね。でも普通にやってもおもしろくないから、パーティーっぽくやろうと思って」
MASAYA(ギター)「当時はラスティックやサイコビリーのシーンもいまより盛んだったと思うんですよ。ラスティックの東京スカンクス、ロス・ランチェロス、DOG'GIE DOGGとか大御所の先輩がバリバリ活動してて、〈DOLL〉を読むと、必ず情報が載ってて。そういうタイミングも合ったのかもしれない」
KATSUO「サイコビリー、ラスティックも大好きだったので、いろいろ吸収できた時期でしたね」
MASAYA「ネットもまだそれほどなかったですからね。やっぱりレコード屋に足を運んで、〈何だ、このジャケは!〉みたいな時代だったから。
――同世代で似たような音楽性のバンドはいました?
KATSUO「よく訊かれるんですけど、結構いたんですよ。いまもやってる連中はいるんだけど、アンダーグラウンドの美学を大切にしていたり、先輩もこだわりの強い人たちが多いですからね。僕らは……何だろ、あまりそのへんのシーンに凝り固まっていたわけじゃなく、こういう音楽をやっているから聴いてくれよ、というスタンスでした」
SUZUYO(サックス)「いろんなジャンルの人たちと対バンしていたので、それで徐々に広がっていった感じですね」
――当時からいろんなジャンルのバンドと対バンを?
MASAYA「いや、最初はストリート・パンク、Oiパンク、サイコビリー系のバンドが多くて。だんだんブラスが入ってるスカ・バンドや、ワールド・ミュージックなバンドともやるようになり……それからまたSTEP UP RECORDSに入って、ガラッと変わりましたね。メロディックなバンドとも繋がって、そこは同世代の同ジャンルのバンドとは意識的に違う方向性をめざしました」
――そこは意識的だったんですね?
MASAYA「そうですね。そのシーンのなかで限界を感じたというか。民族音楽のシーンって、海外と比べると、日本じゃ微々たるものだと思うんですよ。どこまでいってもポーグスは超えられないし、チーフタンズとかトラディショナルな音楽にも勝てないし……環境や血が違いますからね。だったら、自分たちの売りは何かなと思って、いまのような音楽性に辿り着いたんですよ」
――自分たちの〈売り〉や〈らしさ〉に気付いたのはいつ頃ですか?
KATSUO「〈らしさ〉は最初から意識していたと思うんですよ。これカッコイイから採り入れよう、誰かのマネをしようとは思わなくて。メンバーが増えて、いまの編成になって、ようやく自分たちがやりたかったアプローチが身に付いてきたのかなと」
SUZUYO「少しずつ形になってきた感じだよね」
KATSUO「誰にも似てない音楽やライヴをやりたいと思ってましたから。最初はしっちゃかめっちゃかでしたけど」
――結成当初から意識していた〈らしさ〉って、言葉にできますか?
KATSUO「昔よく例えられたのは、〈オモチャ箱ひっくり返したみたいなバンドだよね〉って(笑)。あと、〈THE CHERRY COKE$はディズニーっぽいよね〉って。あまり音楽に例えられることがなくて」
――ははははは。
KATSUO「そう言われることは僕らにとって有り難いというか、武器になるのかなと思って。音楽のルーツなんて知りたい人がいれば、後から調べればいいわけで。最初の取っ掛かりは、オモチャ箱ひっくり返したとか、感覚的な部分でいいと思うんですよ。ほかにもたくさん大所帯のスカ・バンドがいたにも関わらず、僕らは当時ミニマムな編成だったのに、そういう表現で例えられたのは……楽しい音楽、血が騒ぐ音楽をやりたいという気持ちが伝わっていたからじゃないかな」
――いい意味でガチャガチャした雰囲気は大事にしたい?
MASAYA「そうですね。まあ、良くも悪くもですけど(笑)」
SUZUYO「あははははは」
KATSUO「悪い意味で出る場合が多いですけどね(笑)」
MASAYA「予定調和じゃないことを常にやりたいんですよ。ハプニング的な……ライヴってエンターテイメントじゃないですか。メンバーも7人いるし、みんなマイクの前できっちり演奏して、CDばりのクォリティーでやって、みたいなことは誰も求めてなくて。見栄えとか、お客さんがワクワクするようなショウ的ライヴをやりたくて。弦が切れた、ベースの音が出ない、スティックがどこかいっちゃった。それもライヴならではのおもしろさに繋がりますからね」
SUZUYO「トラブルに強いバンドだよね(笑)」