インタビュー

INTERVIEW(2)——自分たちの武器はハミ出すこと



自分たちの武器はハミ出すこと



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――ほんとTHE CHERRY COKE$は独自のサウンドを打ち立ててますよね。いわゆるミクスチャー音楽とも違うし、対バン経験もあるフロッギング・モーリーともまた質感が違うので。

KATSUO「そこは気を付けているところですね。外国にルーツを持ってる音楽を日本人がまんまやっても、彼らに敵わないですからね。日本でもトラディショナルな音楽をやろうと思っても、めちゃくちゃ上手い人はたくさんいるし。僕らはもともとパンク・バンドだという開き直りというか(笑)、それを強みにしつつ、日本人にしか表現できない繊細さも意識してます」

MASAYA「フロッギング・モーリーといっしょにやったことは大きかったですね。初来日のときに前座で回らせてもらって、〈あっ、この路線でやっても敵わないな〉と思って。ドラム一つとってもパワーが違うし。で、自分たちの武器は何だろう?と考えたときに、ハミ出すことだなと思って。今回のアルバムを聴いて、従来のアイリッシュ・パンクが好きな人からは、こんなのアイリッシュじゃねぇ、と言われるかもしれないけど。むしろそう呼ばれたくて(笑)」

SUZUYO「音源一枚一枚とっても色合いが違うので、どんどん進化していると思います」

――バンド編成に民族楽器がどんどん増えていったのは、なぜなんですか?

KATSUO「トランペット(KOYA OGATA)が旅行でイギリスに行ったときに、ティンホイッスルをHIROMITSUのために買ってきたんですよ。HIROMITSUはもともと雅学をやってる家で育っているから、笛とかも吹けるんですね。で、試しにティンホイッスルを音源に入れたら結構評判が良くて。徐々に曲のなかに入るようになって……その後に笛を使った曲を意識しはじめるようになって、自然とマンドリン、バンジョーとかそれに似合う楽器を入れるようになったんですよ」

――へぇー、きっかけはそんな些細なことだったんですね。

KATSUO「そうですね。もとには映画音楽やカントリーが好きだったりってこともあるけど」

――現在の編成で音をまとめるのは大変だったと思うんですよ。自分たち的に音が固まったなと思えたのは、いつ頃ですか?

MASAYA「セカンド・アルバムの『ROUSE UP』(2005年)ですかね。裏打ちしながらティンホイッスルやピアニカとかトロージャンズみたいな曲をやったりしてましたからね」

KATSUO「完全に背伸びしたアルバム(笑)」

SUZUYO「ははははは」

MASAYA「いろんな要素を入れてましたね。すでにメタルっぽいハードな曲、海外でも流行ってるヴァイキング・メタルが認知される前から、そういう音をやってましたからね。お客さんからもいまになって、〈あれやってよ〉と言われるんですけど、そんなの7年前からやってたよ、って(笑)。いつも思うんですけど、先に行きすぎるんですよ(笑)」

KATSUO「最終的にバンドが解散した後、あいつら早かったよねって言われるんでしょ?」

MASAYA「そうそう。『ROUSE UP』は、ほんといろんなことやってますね」

KATSUO「好きな人はおもしろいアルバムだなと言ってくれますけどね」

――バンド的には『ROUSE UP』を作り上げたことは大きかったと。

MASAYA「その後にフロッギング・モーリーとアメリカ・ツアーを回ったんですよ。で、サード・アルバムの『SAIL THE PINT』(2008年)から日本語詞が増えたんですよね。それはアメリカに行って、日本人であることの誇りや強みを再確認して……アメリカではなぜか日本語詞の曲をやったほうがウケたんですよ。そこで『SAIL THE PINT』から日本語詞の割合が半分ぐらいに増えて。それで次の『KEEP THE FIRE』(2009年のファースト・ミニ・アルバム)を経て、前作の『SEVEN』(2011年)で全部日本語になったんですよ。今回もそうだけど、それはアメリカのツアーが大きかったですね」

SUZUYO「あのタイミングでアメリカに行って、本当に良かったよね。じゃなかったら、いまみたいな音楽性になってないかもしれない」

――ああ~、そうなんですね。

MASAYA「もともとメンバーも日本語のロック・バンドがみんな好きだし。でも若い頃は洋楽志向が強すぎたり、〈青春パンク〉という呼び方が悪い意味で使われていた時代もあったじゃないですか。それでちょっと日本語でやりたくないなと思っていたんだけど。アメリカに行ったときに、俺らは日本人なんだからって自覚した部分があって」

――今年結成13年目になりますが、ほかにターニング・ポイントになった出来事は?

MASAYA「KEMURIといっしょにやれたことは大きいですね」

KATSUO「やっぱりSTEP UP RECORDSに入ったことですね」

――ここ最近さらにパンク系バンドとの対バンが増えてませんか?

KATSUO「そうなんですよね(笑)」

SUZUYO「お客さんも若い人から大人の人まで幅広いもんね」

MASAYA「パンク好きな人って、頭が柔らかいと思うんですよ。かっこ良ければ受け入れてくれるし、いいライヴをやれば認めてくれますからね」


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掲載: 2012年07月04日 18:00

更新: 2012年07月04日 18:00

インタヴュー・文/荒金良介