インタビュー

INTERVIEW(3)——自身の音楽のエネルギーが細部までくっきり見えるように



自身の音楽のエネルギーが細部までくっきり見えるように



小林太郎_Alive2

――となると、今回の収録曲っていうのは、基本的に去年のバンド活動以降に作った曲?

「“鴉”以外は、バンドが終わって、いまのこの感覚を大事にしようと思って、年始ぐらいに作った曲ですね。“鴉”はサビだけ高2のときに出来てたんですけど、そのときはそれ以上作れなくて。タイミングが来たときに作れればと思ってたのが、今回出来たっていう感じです」

――さっきの言い方で言うと、布を被せることなくそのままを出した曲たちっていうことですよね。

「そうなんですけど、それがいいからやってるというよりは、いまはそれが楽だからっていう感じではあるんですよね。〈布を被せてピンボケさせてたのがよかったのに、はっきり見えちゃうとダメだよ〉って言われたら、〈すいません!〉ってもう1回布を被せるかもしれない(笑)。でも、ここで一発、自分の持ってるものをストレートに出して、それが果たしていいことなのか悪いことなのかを見極めないと、この先音楽できないなと思って」

――『DANCING SHIVA』のときは〈あえて型にはめてみる〉っていう作り方をしてたわけで、そこから比べるとホントに大きな変化ですよね。

「お菓子で例えると、前は型に材料を入れて作ってたとしたら、いまは床にそのままバーッて流してるだけ(笑)」

――それ、お菓子になるかすらわからないね(笑)。

「もちろん曲ごとに器があって、そこに流し込むイメージもあるんですけど、曲の器っていうのはまた自分自身の器とは違って、用意されているもののような気がするから、ただ自分の中身、才能の塊をできるだけそのまま出してあげるだけっていう感覚ですね」

――ちなみに、改めてバンドを経験したことで、曲作りの手法自体にも変化はありますか?それとも、あくまで感覚が変わっただけ?

「感覚が変わっただけですね。ホントに布一枚変わっただけというか。“鴉”で言うと、〈俺は鴉になる〉っていうフレーズが出てきたときに、前はそれに意味付けしなきゃって思ってたのが、今回はパッと出てきた流れがあったら、その次の流れが出てくるように道を作ってあげて、感覚でゴールまで行き切る。出来上がったときに、わかりにくかったら変えればいい。それだけで、えらくスムースになりました。精神的な余裕は前と大きく違うんですけど、出来た作品は布一枚取っただけっていう」

――うん、曲調自体が大きく変わったわけではないですもんね。

「自分の音楽のエネルギーが、ただくっきり細部まで見えるようになっただけなので、何かが変わったわけでもないんですよね」

――でも、バンドからふたたびソロになったタイミングで〈俺は鴉になる〉だから、意味を詮索したくもなるけど。

「そういう受け取り方も正しいと思います。どこかのタイミングで出せたらってずっと思ってて、いまがそのタイミングだったっていうことは、そういう意味でもあるのかなって。自分で考えてたわけじゃないですけど」


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掲載: 2012年07月11日 18:00

更新: 2012年07月11日 18:00

インタヴュー・文/金子厚武