INTERVIEW(2)——いろんなものが虚しい
いろんなものが虚しい
――(笑)それで、初投稿はいつ?
「中3のときの1月7日ですね」
――お、日付まで覚えてる。楽しかったですか?
「初めはおもしろかったし、ワクワクしながらやってましたね。なんかいいなって思って……意外と(ユーザーの)反応も良かったんですよ。あー良かったって思いましたね」
――リリックはいつ頃から書いてたんですか?
「歌詞の真似ごとみたいなことは小学校のときからやってました。ただ、そのときはただの暇潰しだったというか。トラックに合わせてリリックを書くようになったのは、ネット・ラップを知ってからですね。まあ、出てきた言葉をそのまま書いてただけですけど」
――でも、ネット・ラップで反応があったら、〈俺、イケるんじゃねえ?〉っていう感じにならない?
「いやー別にプロになろうとは思ってなかったんで、そのときは。まあ、楽しくできたらいいな、くらいの……でも、ライヴはやりたいと思ってたんですよ。投稿するだけじゃ物足りなくなって」
――地元にライヴができる場所ってあった?
「いや、ないですね。僕が出られそうなイヴェントとかもなかったし。文化祭に出たりはしてましたけどね、ひとりで。それでも楽しかったというか」
――友達からのリアクションはどうだった?
「うーん、そんなになかったんじゃないかなあ。ネタにされましたけどね、いろいろ。〈ラップやって!〉とか〈Yo!〉とか〈チェケラ!〉とか言われて」
――ちょっとウザイね。
「ウザイです(笑)。その頃、フリースタイルがすごい好きだったんですよ。ネットでもSkypeを使ってフリースタイルやってたんだけど、学校でも結構やってて。〈ラップやって〉って振られると……」
――フリースタイルで対応するんだ(笑)。
「はい。それを学校でもやってたんですけど、1週間くらい続けてたら、教室の後ろにいる女子とかに〈もうやめなよ。イタイから〉って言われて。そのとき気付いたんですよね。何も知らない人から見たら、フリースタイルってイタイんだって。で、すぐやめました。ヒップホップに関心のない人の前ではやめようって。笑われるだけだから」
――学校自体はどうだったんですか?
「学校に楽しく行ってたことはないですね。ずっと辞めたいと思ってました。なんて言うか、いろんなものが虚しいって思ってた時期があるんですよ。まあ、それはいまも思ってるんですけど」
――虚しさに襲われたのって、何か理由があったんですか?
「何だろう? 高校1年の夏あたりで、考え方がガラッと変わったんですよ。あんまり人と関わらなくなったし、話さなくなったし、部屋からも出なくなって。高校で友達もできなかったし、その前の友達とも離れて、ずっとひとりでいました」
――〈閃光ライオット〉にエントリーした理由には、その状況から抜け出したいっていう気持ちが含まれてますか?
「いや、それはあんまり……それもやっぱり、ライヴがやりたかったんですよね。〈閃光ライオット〉のファイナルって、ライヴ審査なんですよ。そこまで行けば、ライヴができると思って」
――結果的には〈閃光ライオット〉でグランプリを獲得し、メジャー・デビューに繋がったわけですよね。〈これで未来が開ける!〉みたいなことを思わなかった?
「……そういうのもなかったですね。メジャー・デビューっていうと、たくさんの人が関わってくるじゃないですか。そのなかでいろんなことがわかってくると、なんか悲しくなってきて……。というか、テンションが上がることがないんですよ、生きてて。いままででテンションが上がったときって、たぶん1回しかないですね。中学のときに野球をやってたんですけど、休日練習で雨が降りはじめたときっていう(笑)」
――ライヴのときは?
「テンションが上がるっていう感じじゃないですね。スイッチが入るっていう感じです、僕のなかでは」
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