INTERVIEW(2)——覚醒感を持ったロック・サウンド
覚醒感を持ったロック・サウンド
――前のメンバーでプリプロをして、一度はレコーディング直前までいったとのことでしたが、本作に入ってる曲はその頃のネタがベースになっているんでしょうか? それとも、いまの4人になってから書いた曲が多いですか?
「半分ぐらいは当時作ったやつで、残りの半分はメンバーが変わってから作った曲って感じですね」
――ざっくり言って、グランジ~オルタナ色の強い曲がいまのメンバーになってから作った曲だったりするんでしょうか?
「いや、例えばいちばん激しくてダウナーな“BABY ACID BABY”とかは前のメンバーのときに作ってたんですけど、でもそれがまったく形にならなかったんです。言い方は悪いですけど、ただのロックンロールみたいになっちゃって、〈もっと覚醒感を持ったロックなんだよね〉っていうのを、参考音源とか持って行って〈こういう感じで〉とかやってみても、なかなかその通りにはいかなくて。でも、この曲が好きだったから活かしたいと思って、いまの4人で合わせたときに、一発でハマったんです」
――中尾さんと勇さんとやる前から“BABY ACID BABY”のような曲を書いていたっていうのは、当時から初期衝動的なものを求めていたことの表れだったりするのでしょうか?
「それはわかんないですね……とにかく、フラストレーションはすごく溜まってました。ライヴもできなくて、プリプロもなかなか進まなくて、メンバーそれぞれストレスが溜まってただろうし……ある意味、前の4人での最後っていうのは去年の1月のワンマンで、あれが前の4人で見せられた結晶だったような気がしますね。そこから先は、もう無理だったんです」
――そういうなかで生まれた“BABY ACID BABY”が、いまのメンバーになってやっとはまったと。
「そうですね。ホント全部〈これしかない〉っていうタイミングでいろいろハマっていって、良かったですけどね」
生々しいけど、聴いてて疲れない音
――そして、本作は何と言ってもエレクトリカル・オーディオで録音が行われているわけですが、ちなみにどうやってリリースするかっていう話は、録りに行く段階ではどうなっていたのでしょうか?
「自主で出すか、どこかから出すかわからない状態だったんですけど、とにかく〈エレクトリカル・オーディオで録りたい〉っていうのをずっと言ってました。〈いま作ってる楽曲がめちゃめちゃ良いから、とにかく行かせてくれ〉って事務所に言いに行きましたね」
――では、改めてお訊きすると、なぜそれほどエレクトリカル・オーディオで録りたいと思ったのでしょうか?
「エレクトリカル・オーディオで録った作品の音で特徴的なのは、硬質でヘヴィーなんだけど、聴いてて疲れない。なおかつ、ロウがたっぷりあって、どこか透き通ったような、きれいな感じもある。そういう音が欲しかったんです」
――最初にエレクトリカル・オーディオを意識した作品はニルヴァーナの『In Utero』だったとか?
「初めてアルビニを意識したのはそうですね。最初に聴いて〈音メチャメチャやな〉と思って(笑)。生々しいけど、でも聴いててそんなに疲れないんですよね。ただ、あの盤はそのときのカート(・コバーン)の重さっていうのがあって、そういう面では聴くのが辛かったりもするんですけど、音作りっていう面で言ったらメチャメチャかっこ良いなって。そこから遡って、ビッグ・ブラックとかレイプマン、シェラックを聴き、スタジオを立ててからの作品も結構聴いてましたね。ピクシーズ、PJハーヴェイ、モグワイとか」
――特に影響を受けた1組を挙げるとすれば?
「シェラックですね。シェラックをずっと聴いてたときに、〈いまの4人でこのスタジオで録れたら最高なんじゃないか〉って思ったんです。あとクラウド・ナッシングスもデカかったですね。ちょうどスタジオを押さえた時期に聴いてたんで」
――最近の新人ではなかなかこの手の音の人っていなかったですもんね。
「〈そうそう、こういうの聴きたかったんだよ!〉って思いましたね。USインディー好きなんで、最近ずっとドリーム・ポップみたいのばっかり聴いてたから、最初はクラウド・ナッシングスも宅録のイメージがあって、スルーしてたんですよ。でも、聴いてみたらメチャメチャオルタナで、〈なんだこのバンド?〉って思ったら、エンジニアがアルビニで、エレクトリカル・オーディオで録ってて、バンドがこうしたかったんだっていうのが明確に伝わってきたんですよね」