INTERVIEW(3)——バンドという生き物のドキュメント
バンドという生き物のドキュメント
――実際に行ってみて、いかがでしたか?
「アルビニが表紙のサンレコを持ってきてるんですけど(と言いながら、「サウンド&レコーディング・マガジン」誌の2005年11月号を鞄から取り出す)、まずこう言い切ってますからね」
――(表紙の見出しを読む)〈コンピューターで録音するほうがオレにとっては非効率的だ〉。名言ですね(笑)。
「テープでできないことは何もないって言ってますからね。スタジオBってとこでドラムを録ったんですけど、天井は高いし、壁自体もメキシコから取り寄せた泥のレンガみたいのが吸音材になってて、そこでドラムを叩くと自然なアンビ(エント)感が出るんです」
――ああ、ナチュラルないいリヴァーブの感じがありますよね。
「あとからリバーヴかけなくても、十分アンビエントがあるんですよね。かけるにしても、エコー・プレートっていうすごく美しいアナログのリヴァーブを薄くかけるだけで十分でした。僕はアルビニのギターを借りて録ったんですけど、〈試しに1曲録ってみようか〉って録って、メインのコンソール・ルームで聴いたら、笑っちゃうくらい良くて、〈もういいじゃん、これで〉っていう感じで進んでいきましたね」
――他のお三方の感想はどうでしたか?
「中尾さんは〈エレクトリカル・オーディオは僕たちにとってのアビーロード・スタジオだよ〉って言ってましたね(笑)。あと余計な編集はしないっていうのがアルビニとかグレッグの信念だっていうのはわかってたんで、とにかく練習をしまくったうえで行ったんです。例えば、5テイクぐらい録って残して、〈明日聴こう〉とかよくあるんですけど、テープだとそれができないんで、いさぎよかったですね」
――それぞれ経験豊富なプレイヤーでも、バンドとして合わせる時間は決して多くなかったわけで、アナログでレコーディングするにあたっては、やっぱりかなりの練習は必要としたと。楽曲の幅も広いから、ノリが一辺倒でもないですもんね。
「そうなんですよ。一定したノリのをずっと聴かされるのって、30超えてから苦痛になってきたんで(笑)。そういうものを作りたくなかったから、テープ・レコーディングにしたっていうのもありますね。モタっててもいい、ピッチが合ってなくてもいい、それが人間だし、バンドという生き物のドキュメントになってると思うんです」