INTERVIEW(4)——ある種の麻薬的なトリップ感
ある種の麻薬的なトリップ感
――楽曲に関しては、もともとあったものが半分、新しく作ったものが半分とのことでしたが、それぞれに傾向みたいなものってあるんですか?
「結構混ざり合ってると思います。“INA-TAI(BREATHLESS)”はいまの4人で作ったけど、その次の“Chicago, Pills, Memories”もいまの4人で作ってるんで」
――ああ、確かにその2曲って全然違う曲調ですもんね。でも、“INA-TAI(BREATHLESS)”はいまの4人っぽいなって思ってました。
「リフがいなたかったんで、ずっと“INA-TAI”っていう仮タイトルで、〈もう“INA-TAI”でいいんじゃない?〉っていう(笑)。そこに僕はサビのいいコードを考えようと思って、フガジとか聴きまくってましたね。あとクラウド・ナッシングスも参考になりました。音はザクザクしてるんだけど、メロはキランとしてて、そのほうがよりトリップした感じになるんじゃないかと思って」
――最初に〈覚醒感〉っていう話もありましたが、“Chicago, Pills, Memories”や“We’re So Beautiful”あたりはまさにそれを感じます。
「中尾さんとか意外にジザメリ(ジーザス&メリー・チェイン)がいちばん好きらしくて。〈ファストバックスとか、そういうのしか聴いてないと思ってましたよ〉って言ったら、〈いやいや、そういうのも好きだけどさ〉って(笑)。ノイジーなんだけど、メロがキランとしてたり、ノスタルジックだったりとかすると、よりトリップ感あるじゃないですか? ある種麻薬みたいなね、そういうアルバムを作りたいなって。ただ単に音像がハードコアなアルバムを作りたかったわけじゃないんで」
――それこそ、マイブラっぽい感じもありますもんね。
「初期EPとかめっちゃ聴いてましたね。あと、マスタリングをやったジョー(・ランバート)ってやつが、ダーティ・プロジェクターズとか、アニマル・コレクティヴとか、ディアハンターとか、クラウド・ナッシングスもやってる人で、最終的にはまた波形を見てたんですけど、ちゃんとローエンドの部分を切らないで、ミックスのいい部分を残しつつ、ちょっとだけキランとさせてくれて、それも良かったんですよね」
――最初はリリースのことは考えず、いまのメンバーでいい作品を作ることだけを目標にエレクトリカル・オーディオに行かれたのだと思いますが、結果的にはレーベル移籍を経て、ふたたびメジャーからのリリースという形になりました。これに関してはどうお考えですか?
「キューンを選んだのは、ディレクターがもともと飲み仲間っていうこともあったんですけど、ARTのことを好きだって言ってくれたんですよね。ちゃんと顔が見えるし、社長とも会って話をして、〈この会社だったらやってみたいな〉って思いましたね」
――今作のような、日本の一般的なギター・ロックとは異なる音質を持った作品が、メジャーから出る意義は大きいと思います。
「こういう音を広く聴いてほしいと思ったから、そういう意味でキューンを選んだっていうのもあります。これが売れたときに日本は変わるんだろうなって思いますけどね(笑)」
――クラウド・ナッシングスとかを知らない、普段〈日本のギター・ロック〉をメインに聴いてる若い子たちの反応も楽しみですよね。
「まあ、離れる人も多いと思いますよ。でも、新しく好きになってくれる人も多いと思う。そういうことを意識した音作りではないので、恐れはないですけどね。願わくば、10代の子たちが聴いて、〈初めてこんなヤバいのを聴いた〉って思ってくれれば嬉しいかな。そういう子たちにとっての〈初めての危ないロック・アルバム〉になってくれれば、バンドをあのとき解散しないでよかったなって思えると思うんですよね」