INTERVIEW(2)——NYの街からのインスピレーション
NYの街からのインスピレーション
――高橋幸宏の作品の魅力のひとつとして、あの繊細な声で歌われる歌詞の内容にもあると思うんですね。それもマッチョイズムの対極にあるような、いわば〈ダメな僕〉〈さえない気持ち〉的な歌詞。どこか男の弱気な部分を見せてしまうような……。
「ああ、わかるわかる。いつの時代でもどこの国にもそういう感情を持っている若者はいるもんだよ(笑)。僕もどちらかと言えばそのひとりだね。もちろん僕はそういう部分だけじゃないけど」
――しかも、高橋幸宏は60歳になったいまでも変わることなく一貫してそういう歌詞を歌っているというのがまた粋なわけです。
「なるほど、素晴らしいね(笑)」
――あなた自身は歌詞を書く際に、何か哲学にしていることや標榜している感覚などはありますか?
「うーん……特にないかなあ。身の回りで起こったことにまつわる感情をそのまま綴っていることが多いからね」
――例えば最新作『Look To The Sky』の曲の詞を書いた時などは、何か具体的にインスパイアされたりしたのでしょうか?
「いつもそれなりに影響は受けているんだけど、具体的にコレというのはないんだよね。もちろん、デヴィッド・ボウイやボブ・ディランの歌詞にはいつもインスパイアされているし、何かあったら彼らの歌詞を読んだりするよ。あとは、僕はNYに住んでいるから、地元のポエトリー・リーディングの詩人の作品とかは好きだね」
――へえ。例えば誰ですか? 何人か教えてください。
「うーん……いや、ちょっと思い出せないな(笑)。帰国して部屋の本棚を見ればわかるんだけど(笑)」
――いまのNYには若い詩人が増えているのですか?
「増えてるのかなあ……それもよくわからないけど、多いのは確かだね。そこまで細かくチェックしているわけじゃないけど、僕が好きで読んでいるのは、NYを舞台にしたいろいろな詩を集めているオムニバスのような詩集なんだ。タイトルは忘れちゃったけど。あともちろんパティ・スミスやルー・リードのような、あの街を描き続けているミュージシャンの書く詞にもインスパイアされるよ。結局、僕もNYに住んでいて、そこでの暮らしのなかから題材となるような出来事を見つけたりするわけだからね」