インタビュー

LONG REVIEW——livetune adding Fukase(from SEKAI NO OWARI) “Take Your Way”



演出家的な視点



livetune adding Fukase(from SEKAI NO OWARI)



livetune名義としては2枚目のリアル・ヴォーカル作品“Take Your Way”。その表題曲の冒頭から印象深いのは、(インタヴュー中にもあったが)キックの主張がやや控え目であるということ――ひいては、これまで以上に照準を〈歌〉に合わせているということだ。フロアライクな楽曲である点は変わりがないものの、そこに封じられた物語の中心にあるのは、あくまでFukase(SEKAI NO OWARI)のナイーヴなヴォーカルと飛翔感に満ちたメロディー。〈選択を恐れずに前へ進め〉という詞は主題歌となったアニメ「DEVIL SURVIVOR2 the ANIMATION」とも〈生きる〉という行為そのものともリンクするものだが、ファルセットやオートチューン使いで細やかな感情の動きを滲ませたFukaseの声が、そのメッセージをドラマティックに運ぶ。特に、大サビからエンディングで込み上げるカタルシスには抗いがたいものがある。

あいだに北欧のポスト・ロック〜エレクトリック・シューゲイザーを彷彿とさせる清澄な透明感を持ったインストゥルメンタル“Ready for Calming”を挿み、3曲目は〈addding〉アーティストとしてRin Oikawa(Q;indivi)を迎えた“Each and All”。可憐なウィスパー・ヴォイスを引き立てたシンプルなピアノ・バラードだが、歌そのものが激昂しないからこそ、〈降り積もった感情の欠片たち〉をなんとか解放しようとする詞世界がよりエモーショナルに強調されている。そして、これは“Take Your Way”にも言えることだろう。

アニメに関連した楽曲ということもあるのかもしれないが、言葉とトラック、そして声をもって、〈伝えたいこと〉をいかにストレートに届けるか。本作はそのパートごとの抜き差しが絶妙で、ソングライターであり、かつディレクター──演出家的な視点が光る一枚だと思う。


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掲載: 2013年06月05日 18:01

更新: 2013年06月05日 18:01

文/土田真弓