インタビュー

INTERVIEW(3)――最後の作品になるかも……からの転機



最後の作品になるかも……からの転機



――Disc-1はデビューからおおはたさんとの出会いまでで、Disc-2はシャンハイ・レストレーション・プロジェクトことデイヴ・リアンとのコラボレーション3部作『PHANTOM girl』(2010年)、『HATSUKOI』(2011年)、『I’m yours!』(2012年)からの選曲が中心になっています。デイヴとはどんなふうに出会ったんですか?

「『Zoy』(2008年)というアルバムを作った後、なにをやったらいいかわからなくなっちゃったんですよね。それで、もう音楽を辞めようかと思ったこともあって。じゃあ、最後に明るいアルバムを作ろうと思ったんです。これまで私は音楽に明るさを求めたことはなかったんですけど」

――それはどうしてなんでしょう。

「私にとって音楽は逃げ込める場所だったんです。聖域というか、心安らぐ場所。そういう音楽をやりたいと思ってきたし、そういう音楽を作るのが自分の役割だと思ってきたんです。私、昔からスタバの店員になりたかったんですよね。お客さんに美味しいコーヒーを手渡すことで、その人の気分をリフレッシュしたり、ひと息つかせてあげたりできるじゃないですか? そうやって直接的に誰かの役に立っている実感が欲しかったんですけど、歌でそれができている気がしなかったから、もう音楽を辞めようかと……。それでも、もう一度そういうものにチャレンジしたい、最後に明るいものを作りたいな、と考えていた時にシャンハイ・レストレーション・プロジェクトを聴いて、女性ヴォーカルの声の扱いが綺麗だったので気になって、MySpaceを通じてデイヴに連絡してNYで会ったんです。私のことを知らない人とやってみたかったので、自分のことはなにも説明せずにお願いすることにしました。ただ、これが最後のアルバムになるかもしれないこと、明るいものを作りたいことだけを伝えたんです」

――デイヴも驚いたでしょうね、〈最後の作品になるかもしれない〉なんて言われたら。

「そう、そこから3枚もいっしょに作ってるから、いまではすごくからかわれるんですよ(笑)。〈初めて会った時、そんなこと言ってたよな〉って。でも『PHANTOM girl』を作り出したら、その制作過程がすごく楽しかったんです。同世代の人と、役割分担とかもなく、トラックをいちからいっしょに作っていくのは初めてだったから、もう楽しくて楽しくて。私がメロディーを付けて、デイヴが〈じゃあ、こういう音を入れてみようよ〉とか、デイヴは私のアイデアも否定せずに試してくれる、すごくポジティヴな良いヤツなんですよ(笑)。それで『PHANTOM girl』は5日間ぐらいで基礎が出来ちゃった」

――『HATSUKOI』では、美雨さんが子供の頃から憧れていた小室哲哉さんが楽曲(“True voice”)を提供しています。

「嬉しかったですね。その前に小室さんのアルバム(2011年作『Digitalian is eating breakfast 2』)に参加させてもらったんですけど、そこでKREVAと間接的に共演したんです。KREVAとは20歳ぐらいの頃から知り合いだったけど何年も話していなくて。でも、小室さんのアルバムに参加したことがきっかけで私の曲“I’m Yours”で共演することになったんです。“True voice”に関しては、小室さんが〈好きにしていいよ〉って言ってくださって。メインのメロディーだけ残して、自由にアレンジさせてもらいました」

――さらに今回は、小室さんの曲をカヴァーした“永遠と名づけてデイドリーム”が収録されていますね。

「この曲は子供の頃からずっと聴いてきて、ライヴでは何度かやっているんですけど、小室さんのファンの間では〈隠れ名曲〉として愛されているものなんですよね。それだけに安易な気持ちではアルバムに入れられないなと思っていたんですけど、自分のルーツだから、ベスト盤こそ相応しいと思って初めて音源化したんです。一人の作曲家の孤独についての歌なんですけど、私はずっと小室さん自身と歌詞を重ね合わせてきたので、その気持ちに沿って歌いました」



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掲載: 2013年06月26日 18:00

更新: 2013年06月26日 18:00

インタヴュー・文/村尾泰郎