インタビュー

Monday満ちる 『BRASILIFIED』



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[ interview ]

デビューから約22年、シンガー・ソングライターとして、プロデューサーとして進化&深化し続けるMonday満ちるの新作が到着した。ジャズを基盤にさまざまな国のさまざまな音楽を採り入れ、〈Monday節〉と言うべきオリジナル・スタイルを確立してきた彼女が今回フォーカスしたのは、情熱の国・ブラジル。新世代ブラジリアン・ミュージックの歌姫、ベべウ・ジルベルトの作品などを手掛けてきたシモーネ・ジュリアーニをプロデューサーに迎え、マルコス・ヴァーリやミルトン・ナシメントといった大御所の名曲から、ハービー・ハンコック“Tell Me A Bedtime Story”に歌唱を付けた“Bedtime Story”(笠井紀美子が79年に歌ったヴァージョン)など、Mondayの視点でブラジルを描いた6曲のカヴァー、さらにオリジナル4曲を収録している。色彩や温度までも感じさせるような彼女特有の表情豊かな歌声、ブラジルの躍動とNYの洗練を融合したサウンド・プロダクション――真夏の太陽に誘われて思わず旅に出たくなる、輝きに満ちた名盤の誕生だ。



前と同じことを続けてやるのが嫌い



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――お住まいはNYですよね。Mondayさんがどのような暮らしをされているのか、とても興味があります。

「自然豊かなところで田舎暮らしをしています(笑)。NY州ロングアイランドの東にあるノースフォークという田舎町。畑があって、ビーチがあって、ワイナリーも近所にたくさんある。この季節になると新鮮な食材がたくさん手に入るから、もう毎日〈万歳!〉って感じ(笑)。野菜や果物、魚、牛乳、近所のファームをいろいろ回って採れ立ての物をあれこれ買い物するのがとっても楽しい。本当に過ごしやすい素敵なところですよ」

――お話を聞いただけで素敵な風景が浮かびます。あえてそういう土地を選んだのですか?

「そうですね。NYに戻ったのが2000年初頭なんですけど、それからすぐに妊娠したんです。そこで、子供を育てるにはどんな環境がいいのか考えるようになりました。当時はマンハッタンに住んでいましたが、あそこは家賃も高いし、環境としては少し心配だな、と。そんなときに友達の別荘があるノースフォークを訪れて、何となくお家探しを始めてみたら、案外すぐに見つかって。この子(12歳になる息子さんも同席)が生まれてすぐ、1週間後に引越しました。母としては子供のことが最優先、いちばん大事。彼がいつか家を離れる日まで、愛と責任を持って育てること、そこに心を傾けたいんです。音楽は、それができたうえで取り組むというスタンスでやってますね」

――普段はどのような環境で曲作りをしているのでしょうか?

「自宅にスタジオがあるんです。〈My Crib Studio〉って呼んでるの(笑)。ミュージシャンの友達が遊びにくると必ず仕事場を見たいと言うから見せるんですけど、みんなすごいびっくりするんですよ。〈これ、ヒップホップ・セットアップじゃない?〉って。MPC3000とターンテーブルとミキサーと――そもそも新しいテクノロジーを追いかけるタイプじゃないし、これでできるんだからこれでいいじゃんっていう。だから機材は95年からほとんど変わってない(笑)。普段はそこでデモをプログラミングして、曲も自分で作るときはMIDIレコーディングまでやってます。それからマンハッタンのスタジオで生楽器やヴォーカルのレコーディング、ミキシングまでやるという流れかな」

――今回のアルバム『BRASILIFIED』はBillboardからのリリースとなりますが、どのような経緯でこのプロジェクトが始まったのでしょうか?

「マネージャーが話を持ってきてくれたんです。Billboardといっしょに何かプロジェクトをできるから、コンセプトをいくつか考えてプレゼンしようと。そのなかにあった〈ブラジリアン〉というコンセプトを気に入ってもらえて、今回の制作が始まった感じですね。ブラジルは来年サッカーのワールドカップが、2016年にオリンピックが開催されるということで世界的に熱い視線を注がれている国。私自身も、去年リリースした『Soulception』というアルバムがブラジリアンのテイストを採り入れていたので、何だかいろんなタイミングが重なったという感じ。でも、そもそも私は前と同じことを続けてやるっていうのが嫌いなので、アコースティックでシリアスに仕上げた前作からガラリと変えて、今回はプログラミングでアクティヴにいこう、と。これまでもだいたい打ち込みと生を交互にやっているんですよ。やりすぎると飽きちゃうというか、自分のリミットがあるんです、〈これ以上(同じことは)できない!〉って。変化がないと痒くなっちゃう(笑)。それで今回はさらに新しい刺激も欲しくて、プロデュースも自分でするのではなく前からお付き合いのあるシモーネ・ジュリアーニさんにお願いしたんです」

――シモーネさんとは、どんな方なんですか?

「イタリア人で、いまはマンハッタン在住。ベべウ・ジルベルトのプロデュースなど、いろんな音楽を幅広くやっていて、もちろんブラジリアンもすごく好きだし、長年NYに住んでいるからその(NYらしい)テイストもよくわかっている人。初めて会ったのは2年前かな。私がよく仕事しているマンハッタンのスタジオの横に、たまたま彼のスタジオがあったんです。何かのきっかけで話をするようになって、それからすぐに彼がプロデュースしてたDJの楽曲にフィーチャリングする話を頂いて。それが初めての仕事だったのに、何だかとっても息が合ったんですよね。それから今度は私のプロジェクトにプログラミングで参加してもらって。2曲ともすごくいい感じに仕上がったし、とにかく仕事がしやすいし、私のできないことを全部できる才能豊かな人だし、ああ、いい関係だなって。それで今回も彼といっしょに作れたら絶対楽しいだろうなと思って声をかけたんだけど、思った以上に楽しくできました(笑)」



カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2013年07月10日 18:00

更新: 2013年07月10日 18:00

インタヴュー・文/岡部徳枝