インタビュー

INTERVIEW(2)――実はブラジルを訪れたことがない……



実はブラジルを訪れたことがない……



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――今回の制作はすべてNYで行われたんですか?

「そうですね。シモーネさんとSkypeでいろいろ相談しながら、音はデータでやりとりしました。といっても、私の家からシモーネさんのスタジオまでそんなに遠くないんですよ、2時間くらい。でも、できるだけ息子が学校に行っている朝の8時から昼の3時までに仕事を終わらせておきたいし、その間に洗濯やら掃除やら家事も済ませなきゃいけないし……となると、なかなかマンハッタンまで出向けなくて。いまの時代はパソコンでなんでもできるから、すごく助かってますね」

――今作は、オリジナルが4曲、カヴァーが6曲という構成で〈ブラジリアン〉をパッケージした内容となっていますが、Mondayさんにとってブラジルの音楽はどんな存在なんでしょう?

「実は10代、20代の頃はそれほど興味がなかったんです。だけど実際はジャズ界でも、例えばリズムをフュージョンに採り入れていたり、ボサノヴァをやっていたりとブラジリアンのフレイヴァーはあるわけで、何となく耳には入っていたんでしょうね。それが〈カッコイイ!〉と反応するようになったのは日本に来てから。アシッド・ジャズ界隈で、いろんなDJやミュージシャンの友達から曲を教えてもらったり、クラブで聴いたり、そんななかで徐々に好きな音楽として自分に沁み込んでいった感じかな」

――ブラジルの音楽に惹かれるポイントはどんなところにありますか?

「まずハーモニー。ハーモニーの動き方がおもしろいですよね。それから、決して悲しいわけじゃないんだけど、どこかハートを引っ張られるような、琴線に触れるところがある。あとはメロディー。ソウル・ミュージックとは全然違うソウルが入っていて、フォーキーな感じもあって、人によって歌い方にフラジャイルな感じがある。壊れやすいんだけど、すごく強い芯を持っているというか、それがグッとくる。そしてもちろんあのダイナミックなリズム!」

――ブラジルを訪れたことは?

「それが1度もないの! だから、本当はこのアルバム名を〈I want to go to Brazil〉ってタイトルにしようと思ってたくらい(笑)。でもそのまんまじゃん!っていうことで、もう少しオシャレなタイトルにしようと『BRASILIFIED』になりました。意味は、ブラジル色に染まる感じというか、〈ブラジリナイズ〉みたいなニュアンスですね」

――そのタイトル曲は、Mondayさんの作詞/作曲ですね。

「今回私が書いたオリジナルはその曲と“Beautiful People”の2曲なんですけど、両方とも、撮影でインドネシアへ行ったときに浮かんだ曲。“Beautiful People”のほうは、自分の生活にないファンタジー・アイランドを想像して書きました。私が訪れたジャカルタという街はとてもエキゾティックでおもしろいところ。旅でどこかの島に行くと、自分の嫌な生活感を流して、束の間の幸せを掴める感じってある。そんなファンタジーな生活について書いてます。あと、インドネシア人とブラジル人って身に纏う空気感がどこか似ているなって。すごく優しくて温かくてほっと安心する。そこから出てきた言葉が〈Beautiful People〉でした。“BRASILIFIED”は旅の途中にメロディーが出てきた感じ。歌詞では〈ブラジルの何が好きなの?〉って自分に問いかけて、こんなところが好きっていう答えを歌っています」

――その他のオリジナルはシモーネさんが手掛けた“Bossamore”と“Things I Say”の2曲。思わず踊り出したくなる、ブラジル特有の腰にくるリズムの“Bossamore”もたまらないですが、“Things I Say”は今作で唯一しっとりしたバラード。囁くような柔らかいヴォーカルが印象的でした。

「レーベル側から〈元気なアルバムにしてほしい〉という要望もあったし、実際そういう路線の曲が多くなっているけど、シモーネさんと話していて1曲くらいバラードがあってもいいよね、と。そこから“Things I Say”を作ったんです。デモの段階で彼が作ったメロディーに歌詞を付けて、いざヴォーカルを吹き込んでみたら、これはすごく〈裸〉の歌だなって感じました。ちゃんと安定して歌わなきゃいけないというか、いろいろ歌い方を模索しながら歌っていたんだけど、シモーネさんからはもっとウィスパーな感じで歌ってほしいと。自分では十分そのつもりだったんだけど……。で、その夜にもう一度歌ってみようと思ったら、ちょうど息子に〈明日も学校で早起きだから、デモ録りはうるさいからやめて〉なんて言われて(笑)。ドアを閉めてこっそりウィスパーで歌うしかなくなっちゃった。それをシモーネさんに送ったら〈OK!〉って。だからこれは本当に小さな囁き声で歌ったものなんですよ(笑)」

――そんなエピソードが(笑)。他の曲とあきらかに違いますよね。

「シモーネさんが言うには、私はリード・ヴォーカルの声とバック・ヴォーカルの声が全然違う、と。自分でもそこは意識していて、イメージとしては、バックはベッドを作るような感じで、リードはその上に寝る人間のような感じ。“Things I Say”はシモーネさんからバック・ヴォーカルを歌うような声にしてほしいという要望もあったんです。それでこういう仕上がりになりました」



カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2013年07月10日 18:00

更新: 2013年07月10日 18:00

インタヴュー・文/岡部徳枝