LONG REVIEW――Monday満ちる 『BRASILIFIED』
シチュエーションを問わずに聴ける、アーバンなブラジル・テイスト作品
来年開催されるサッカーのワールドカップに向けて、これから世界的に何かと話題と注目を集めるであろうブラジル。先日もワールドカップのプレ大会であるコンフェデレーションズ・カップで見事ブラジルが地元優勝を果たし、大いにその存在感をアピールしたわけだが、クラブ・ジャズ・シーンを代表する歌姫・Monday満ちるのニュー・アルバムである『BRASILIFIED』も、テーマは〈ブラジル〉だ。
今作に収録されているのは、マルコス・ヴァーリ、エドゥ・ロボ、ミルトン・ナシメントといったブラジル音楽のレジェンドのカヴァーが3曲、オリジナルが4曲、そしてキティ・ウィンター“New Morning”、ジョージ・デューク“Sunrise”、ハービー・ハンコック“Tell Me A Bedtime Story”(笠井紀美子のヴォーカル・ヴァージョン“Bedtime Story”)といったキラーなジャズ・チューンのカヴァーが3 曲で、全体にブラジリアンなフィーリングを持った楽曲が並んでいる。
とはいえ、NY在住の彼女のこと、個人的にはNYという街のサウンドトラックは〈ジャズ〉という印象を持っているのだが、あくまでもブラジル音楽のエッセンスを採り入れながら、ここで繰り広げられている音楽はクールでスタイリッシュで都会的なジャズと言っていいだろう。エレクトロニックなビートを下敷きにしつつも、派手でアッパーなダンス・トラックに仕上げるわけでもなく、適度に抑制を効かせたアレンジはスムースかつマイルド。主役のヴォーカルもメロウなアレンジの一部の音として全体のサウンドに自然と調和していて、リスニング快感指数がすこぶる高い。心地良い音楽をじっくりと楽しむことができるアダルト&アーバンな作品となっている。
ブラジリアン・フィーリングを纏ったNY発のハイブリッドな最新クラブ・ジャズ。朝昼晩、仕事のオン/オフ……自宅、通勤、クラブ/バー、ドライヴ、リゾートなど、聴く場所を選ばない、どんなシチュエーションにもフィットしそうなオシャレでカッコ良く、良質な音楽として、この夏聴き込んでみるべき一枚と言えるだろう。