INTERVIEW(2)――あくまで原曲を活かした〈歌もの〉
あくまで原曲を活かした〈歌もの〉
1997年8月26日 〈hide presents MIX LEMONed JELLY 〉より
(C)HEADWAX ORGANIZATION CO.,LTD. photo by KAZUKO TANAKA(CAPS)
――今作は、言わば〈CLUB PSYENCE〉を疑似体験できる作品として仕上げられているような部分もあるわけですよね?
「ええ。それこそパラレル・ワールドみたいなものがあったとしたら、いまでも彼はこんなイヴェントをやってるんじゃないかという設定の作品でもある。聴いてもらえればわかるとおり、1曲目が始まった時点で架空の場所に導かれていくようなストーリー仕立てになっていて。謎の場所でhideがMCを務めながら〈CLUB PSYENCE〉をやっているというような場面設定ですね。そこでのヴァーチャル体験というか。音源については、収録曲の半数ぐらいが新しいアレンジになっているんですけど、もう半分は、原曲をちょっといじったり、新しいパートを付け足した程度のものになっていて。まったく手を加えてないものというのは1曲もないんですけど、原曲のイメージを大幅に変えるようなことはしたくなかった。で、それをすべて違和感なく繋げたかったんです」
――要するに、新たな解釈をすることが目的だったわけじゃなく、気持ち良く繋げていくために必要な手の加え方をしたにすぎないということですよね?
「そうですね。原曲をそのまま使ってるものについては繋ぎの部分を作ることにとどめたり。とにかく全部繋げようというのが当初からあったんで。正直、よくできたなというか、うまいこと繋がったな、と自分でも感じてます(笑)。最初のうちは〈どの曲から始めようか?〉とか、いろいろと迷いましたけど。ただ、僕の場合はそもそも彼といっしょにオリジナルを作ってきた人間でもあるわけで、昔の曲のサウンドをいまになっていじることにもさほど違和感を覚えはしなかった。しかもリスナーの方々にも、僕が作ってきたサウンドというのを長年聴いてきていただいてるわけじゃないですか。それで結果、違和感がないというか、どこか安心できるものに仕上がってるんじゃないかと思うんです」
1997年8月26日 〈hide presents MIX LEMONed JELLY 〉より
(C)HEADWAX ORGANIZATION CO.,LTD. photo by KAZUKO TANAKA(CAPS)
――僕自身にも安心感を覚える部分というのはありました。リミックスなどの場合、あまりにも大胆に料理されていると〈カッコイイのは確かだけど、そこまでやってほしくなかった!〉みたいなことになってしまう場合も少なくないわけですけど。
「そうなんですよね。そういうことになるのだけは避けたかった。誤解を恐れずに言っちゃいますけど、自分でもいろんな人たちのリミックスとかを聴いていて、最初の1~2回はすごいと思わされても、それ以降聴かなくなってしまうものってあるんですね。そうじゃなくて、もっと長く聴けるものにしたかった。僕自身にとっても、のちのち長く聴いていけるものに。インパクトや斬新さよりもそっちを重視しましたね。だから実際、家とか車のなかでもよく聴いてるんですよ。こういうことって久しぶりなんですけど(笑)」
――自分でも聴きたくなるもの。それは絶対に正解のカタチのひとつだと思います。
「ええ。hideといっしょにやってた当時からそうでしたからね。自分で聴けるものを作ろうというのが常にありましたから」
――作品自体にどこか普遍性を感じさせられるのも、そのせいかもしれませんね。同時に、これだけhideさんの歌声がたくさん入った〈新譜〉というものに触れたのも、かなり久しぶりということになります。
「そうですね。hideが亡くなった後にリリースされてきたものの多くは、未発表の曲を完成させたものとか以外は、基本的に旧譜から組み立てられたものだったわけですけど、こうして彼の声を全面的に使いながら新たに再構築したものというのは、久しく出ていなかったわけで。それをまとめるにあたって考えたのは、CDギリギリの長さまで全部を繋げた状態で収録したいということだったんです。だから候補曲はもっとあったんですよ。泣く泣く絞り込んでこの18曲にしたんです。最近、海外のアーティストなんかでも、自分たちの曲をリミックスしたものを延々とネットで流していたりするじゃないですか。なんか、ああいった感じのものにしたかったんです。ただ、同時に、あんまりいまの流行りとかを採り入れたりするのはどうかな、とも思った。リミックスとはいえ、あくまで原曲を活かした〈歌もの〉であるべきだと思ったし、いままでずっとhideの音楽を聴いてきた人たちが、自然に聴けるものにしたいと思ったんです。だからとにかく原曲を重視しましたし、〈いまのクラブ・ミュージックはこうだから〉みたいなことはあんまり意識しないようにしました」