インタビュー

cali≠gari 『2』



cali≠gari



[ interview ]

作品ごとに振り切った方向性を示すcali≠gariのセルフ・カヴァー・シリーズだが、ハードな面を押し出した1作目『1(正式表記は左右反転)』に続き、第2弾となる『2(正式表記は左右反転)』が到着した。2人のメイン・ソングライターのうち、桜井青(ギター)の楽曲のみで構成された前者に対し、後者は石井秀仁(ヴォーカル)によるナンバーが全曲を占めているが、〈はみ出すこと〉に注力していた時期の原曲に対して現在の4人のセンスを掛け合わせた結果、クールなポップネスが全編で花開いた仕上がりとなっている。そんな本作について、アレンジの中核を担った石井に話を訊いた。



メロディーすら変わっている曲も



――過激な楽曲が揃ったセルフ・カヴァー集の第1弾『1』はある意味でコンセプチュアルな内容でしたけども。

「『1』だけですよ、それは」

――でも、『1』のことも伺ったインタヴューのときに、〈『2』はもっとコンセプチュアルになる〉といったようなことをおっしゃってましたよ?

「俺は言ってないですよ、そんなこと」

――言ってましたよ?

「それはあれだ、要は録ってる曲がすごいたくさんあるんですよ。だから、ジャズ……ジャズっていうかね、ジャズっぽいニュアンスの曲? そんなやつをまとめたいって言ってて。それはもう録ってるから、そのことを言ったんじゃないですかね。全部ジャズでまとまって……いや、ジャズじゃねえな。ジャズじゃねえな(笑)」

――2回言ってますが(笑)。ちょっとムーディーな雰囲気のものでしょうか。

「うん。たぶんそれが先に出るはずだったんじゃないですかね、当初は。でも今回はそうじゃなくて」

――では、今回の『2』に収録されている5曲は別に録っていっている楽曲のなかから選んだということでしょうか。

「たぶん、そういうんじゃないですね。そもそも、これに入れるために録ったっていう曲はほとんどなくて。“ギャラクシー”っていうのは、曲に順位つけてったなんとかっていうライヴでやったやつで……。

――去年の11月11日の〈密室☆ザ ベストイレブン〉(ファン投票による上位11曲を〈ザ・ベストテン〉形式で演奏した企画ライヴ)ですね。

「そこでやったときに、誠さん(武井誠、ドラムス)がひとりで叩くからって、それ用に作ったトラックなんですよ(武井のみがステージ上に現れて生演奏、他のパートは書割+演奏を録音したものを流すという演出だった)。歌もそれ用に歌ったまんまで。あと、“その行方 徒に想う…”っていうのは、野音のとき(今年6月22日に活動休止から10周年記念で行われた日比谷野外音楽堂でのライヴ〈caliversary in YAON“2003-2013”「死せる青春」Days which made adolescence,and…〉)に、なんか1曲ぐらい昔のやつをやらないとな、って作ったんですよね。だから、その2曲っていうのは今回の『2』を想定してなくて」



武井誠
武井誠



――では、残りの3曲はどういうセレクトでしょう?

「“かじか”と“ダ・ダン・ディ・ダン・ダン”はこのセルフ・カヴァー企画のために作ってると思うんですけど、“虜ローラー”は単純に曲がなかったから、最後にギリギリで作って。できれば“ギャラクシー”は入れたくなかったんですけど、そうするといつになっても『2』を出せないので、しょうがなく入ってますね。他の曲は原曲に対して思いっきりアプローチを変えてるんだけど、“ギャラクシー”はあくまで誠さんが叩く用に作ったやつを強引にねじ込んだ感じなんです。あと、そもそも曲自体が好きじゃないんですよ」

――ご自身の曲なのに……これは『第6実験室』に収録ですね。

「そうそう、『第6実験室』ってのがすごい嫌いで。曲が」

――ご自身で作られた曲が?

「いやいや全体的に。全然いいアルバムだと思わなくて、聴きたくないっていうか、負の遺産って感じなんですよ。あれをやったからcali≠gariはこうなっちゃったみたいな。まあ、それはみんなが思ってるわけじゃないと思うんですけど、その当時は掟破りみたいなことをやりたくて、とにかくバカみたいなことをやったっていう、それだけのアルバムなんで(笑)。もう、歌詞は全部人の悪口みたいな。だからある意味ではコンセプト・アルバムみたいなものなんですけど(笑)、それがもうすごい嫌で。ネタとして作ったみたいなところが自分なかでは結構あって」

――それは、全員でそういうものを作ろうっていう話し合いをしたうえで?

「話し合いはなかったですね。それがcali≠gariの存在意義だったというか……すごい昔ですからね、あれ。俺もまだ20台前半ぐらいで。だから、その当時の自分たちの身近にいたバンドがやっていないこと、言っていないこと、そういうものを詰め込んだ感じですかね。自分たちのことも否定してますけど、身の回りのことを全否定するような歌詞というか。だから、そのアルバムは俺の歌詞も物凄いわかりやすいし、何を言ってるのかも読んだらすぐにわかるような……人の悪口しか言ってないんですけど(笑)、そんなアルバムだったんで、触れたくない感じがして。だいたいでも、過去のcali≠gariの俺の曲ってそんな感じなんですけど、『第6実験室』は特に、っていうのがありますね」

――では、〈密室☆ザ ベストイレブン〉に入ってなかったら演ることもなかったということでしょうか。

「いや、ライヴでやるぐらいはいいかなと思ってるんですけど、今回、“ギャラクシー”以外は全曲アレンジを大胆に変えたり、言ってみれば違うパートが加わってたり、アレンジだけじゃなくてメロディー自体が変わってたりもするんですよ。で、それといっしょにホントは歌詞も変えたかったんですよね。でもそこまで時間がなくて。歌詞を変えればね、まだよかったかなっていうのがありますけど、うん」

――でも“ギャラクシー”は、“マス現象 ヴァリエーション1(有象無象編)”のパーツを組み合わせていたり……。

「してます。それもだから、〈ベストイレブン〉のランキングみたいなのあるじゃないですか。そのなかに2曲とも入ってたんだけど、要はあれは、ランキングを操作してるわけですよ。あんなランキングになるわけないんだから(横でスタッフが爆笑)。演奏できるわけないんだから、こぼれる曲が出てくるんですよ。だから強引にねじ込んだんです」

――遊び心でもなく必要にかられて?

「そこは遊び心ですよね。“ギャラクシー”だけはコード進行もオリジナルといっしょなんですよ。そこに、〈マス現象〉っていう曲のヴォーカルを乗せてるっていう。まあアレンジ次第でいろんなことができますよっていう遊び心なんですけどね」


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掲載: 2013年11月06日 18:01

更新: 2013年11月06日 18:01

インタヴュー・文/土田真弓