インタビュー

INTERVIEW(2)――理論的にはぶつかりまくり



理論的にはぶつかりまくり



石井秀仁
石井秀仁



――それが1曲ありまして、“その行方 徒に想う…”は野音用ということですが、あとの3曲は石井さんがご自身の曲のなかからこれをやり直してみようと提案を?

「いや、そういうことでもないんです。『2』に向けて作っていたということではなく、もう20曲ぐらい録ってるんですよ。ドラムだけ録ってたりとか、中途半端なダビングがされてるものとか、ずいぶん前から録ってるから、もう何を録ってるかすらわからないぐらいなんですよね。で、それをちょっとずつ出していこうっていう企画なんですけど、バンド全体の意見を聞いてたら、いつまで経っても出ないですよ。それが俺の曲だったら、俺が勝手にアレンジして出来たものを〈はい〉ってみんなに渡せばいいだけなんで、どうにでもなるってことですよね。その結果がこの5曲だったっていう感じなんじゃないですかね(笑)」

――そういう、ある意味で合理的な理由で揃った5曲は、さきほどおっしゃっていたようにアレンジがずいぶん変化してますね。元のアレンジは考えず、最初から大幅に変えることを意識して取り組まれた?

「いちいち聴き直したりとかはしないですね。それじゃあ、なんのためにリアレンジして出すんだってなっちゃうから。いまcali≠gariで俺が作ってる曲は、ほぼ全部作り込んだものをみんなに渡してるんですよね。だからすでに編曲されてるものに対して、各々がアプローチをしてくる。それは、『10』(2009年の活動再開後、最初のアルバム)ぐらいの頃からそうだったんだけど、その頃はもうちょっと探り探りというか、このくらいまで作り込んでおけばたぶんこの人はこんな感じで弾いてくるだろうな、みたいな感じだったんですよね。やってない期間もだいぶ長かったから、遠慮と言うか、様子を見て、みたいなところもあったと思うんですけど、いまはもう、俺がこういうアレンジで土台を組んだら村井君(村井研次郎、ベース)はこういう感じでぶっ壊してくるだろうなーみたいな、そういう想像ができるんで楽というか。予想通りこないときもあるけど、そのときは想像以上っていうことですよ? 前はちょっと様子見て一歩、二歩、お互い引いてっていう感じだったけど、いまは駆け引きみたいな感じがしますね」

――各パート、同時に曲を渡すわけですよね? 各々の音がぶつかることはないんですか?

「ああもう、ぶつかりまくりますよ。でもいまは、ぶつかり方が音楽的にアウトなものも全部良しとして作ってるんで。だからひどいですよ、そういう意味で言ったら。研次郎君とかは、昔はホントにキッチリしてる感じだったけど、いまはあえて半音外してくるところもいっぱいあるし、研次郎君は全体を理解したうえでそうやってぶっ壊すけど、青さんの場合はもう、曲のコード進行がなんなのかもわからないのに弾きはじめて、そのまんまのノリで、〈こんな感じでいいですか?〉って言ってきますからね。で、〈それでいいですよ〉って返すんです(笑)」

――めったに聞かない話ですね(笑)。

「まあ、だいぶ斬新ですよね。でもそれがおもしろいというか、音楽的な意味で半音があたってるとか、コードを間違ってるとかっていうのは、全曲ですよ。どの曲も、どっかしらそういう場所があって、そういうのを『10』の頃は直してたけど、もう直さないですね。それでいいや、cali≠gariってそういう感じだからって(笑)。だから、音源だったらまだいいけど、ライヴではめちゃくちゃ歌いにくいなっていうところもあるんですよ。でもそのほうがエキサイティングというかスリリングというか(笑)、音楽って、別に間違っててもいいやって。正しいとか間違ってるとかないと思うけど、理論的に間違ってても全然いいやっていう感じですよね。そもそもcali≠gariって理論的に間違ってるじゃないですか。だからそういうほうがいいんですよね。なんかほら、ちょっと普通じゃない響きってありますよね?」

――ありますね。“ダ・ダン・ディ・ダン・ダン”など、青さんのギター・ソロも何曲かに入ってますが、ああいう部分もお任せで?

「ギター・ソロは絶対弾きたがらないんで、俺が絶対弾いてくれって言うんです。あれもその場でですよ。ギターはいっしょに録ってるんだけど、録ってるときに〈ここはギター・ソロだよね〉って言うと〈ええーっ!?〉て言いながらもその場で一発で出てきたようなやつでオッケーになっちゃうんで、それでああいう、まあ、不思議なフレーズになってるんですよね(笑)。俺もね、耳がなんか〈cali≠gari耳〉になってきちゃったんで、もう全部オッケーで。むしろ、かっちりしたソロを弾かれると気持ち悪いっていうか」


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掲載: 2013年11月06日 18:01

更新: 2013年11月06日 18:01

インタヴュー・文/土田真弓