Yun*chi 『Asterisk*』
[ interview ]
キュートなルックスとヴォーカル、そして遊び心にも富んだ豊潤なサウンドで、ただラヴリーと言うだけでは語り尽くせないチャーミングな楽曲を届けてきたポップ・シンガー、Yun*chi。デビューから1年と数か月、満を持して届けられたファースト・フル・アルバム『Asterisk*』は、初作からコラボレーションしてきたkz(livetune)をはじめ、Floor on the Intelligence、HUM、Avec Avecこと細川拓久真、COR!S、U-SKEこと浅田祐介、飛内将大といったトラックメイカー/プロデューサーたちによって献上された表情豊かな楽曲群によって構成される、ブリリアントな一枚。あらゆる角度から彼女の魅力をウォッチできるアルバムだ!
Yun*chiの歴史を感じてもらえるような作品
――ついにフル・アルバムが出来ました! ファースト・シーズンの総まとめということになるかと思うんですけど、まずはデビューから一年ちょっとを振り返ってみましょうか。
「アルバムを作るっていうことになったとき、今年は何があったかなあとか、まとめのアルバムを作るにはどういうふうに作っていけばいいかなあっていうことを考えてみたんですけど、やはりデビューする前といまでは変わったことがいっぱいありまして。まず、いろんなところで曲を聴いてもらえるようになったこと、あとはライヴを……日本でもたくさんやりましたし、ロンドンにも行かせていただいて、そういう経験をしたことで、制作するときの気持ちが変わるべくして変わってきたなあっていうのが本当に素直な感想で」
──世に問うてみないとわからないことっていっぱいありますもんね。
「そうですね。ライヴで言えば、プロとしてやってるのに何言ってるんだ!って怒られてしまうかもしれないですけど、デビュー当時はやはり怖かったですし、ライヴが始まる前も終わってからも悩んでることが多かったですからね。でも、ちょっとずつ自信がついていって、そのなかで制作も続いていったので、ライヴでみんなが口ずさんでくれるようなものとか、ノリやすいものを作りたい……っていうと上から目線になってしまいますけど、みんなが歌ってもらうことによってYun*chiが出来上がってるんだなっていうのがわかってきたというか」
──聴いてくれる人とのコミュニケーションが原動力になっていったと。
「はい。ライヴの現場でいっしょに楽しんでほしいっていうのはもちろんですし、気持ちであるとか、何かひとつ心にしまってお持ち帰りしてもらえるような、おみやげのようなものを作れるアーティストになりたいなって思うようになってきて、それで作風も変わっていったんです。それこそ“Waon*”(シングル“Your song*”のカップリングに収録)とかはコーラスがいっぱい入っていたり、覚えやすい繰り返しの歌詞や会話のような歌詞が入っていたり。“Your song*”の振付を決めるときも、〈ずっと ずっと ずっと〉のリフレインをお客さんといっしょにやりたくて、先生といっしょにどういうふうにしたら良いかを考えたりとか。デビューしたての頃の、〈ひとりでがんばらなきゃ〉って思ってたYun*chiから、〈みんなでやるにはどうしたら楽しいんだろう〉〈どういう言葉でどういう表現で伝えていけばいいんだろう〉って考えられるようになったYun*chiになっていって、そのなかで出来上がっていった曲には本当にそれぞれのストーリーがあって、それでアルバムのジャケットはこういう感じになったんですね」
──そのときどきのYun*chiをキャッチした短編集、といった感じで。
「そうなんです。まだまだデビューしたてのちっぽけなアーティストなんですけど、歌い方や表現の仕方も変わってきているので、Yun*chiの歴史を感じてもらえるような、そういうものが出来たかなって思います。やっぱり、最初の頃は表現の仕方とかがわからずに、ただ気持ちを込めれば声に気持ちが乗り移るんだって、がむしゃらな感じで歌ってましたし、いま聴くとちょっと恥ずかしいところもあるんですけど、それがちょっとずつ、それこそライヴをさせてもらって、たくさん曲を作らせてもらって変わっていったと思うんですね。歌い方や歌声の変化っていうのは、喋る言葉よりも顔の表情よりも、結構如実に出てるところがあると思うので、そういうところも楽しんでもらえるのかなって思います。あと、吉田ユニさんにジャケットのデザインをお願いするときに、『Asterisk*』っていうタイトルにしたいですっていうことと、これまでに出した曲もいくつか入りますっていうことを伝えて、それで提案してくださったのがこのデザインだったんですけど、このイメージは私の脳内にもちょっとあったんです。ユニさんはデビューのときからずっとやっていただいてるので、ちゃんと気持ちのシェアができていたのかなって、こっそりうれしくなりました(笑)」
──Yun*chiさんの歌声はナチュラルにオートチューンがかかったような、その字面だけだと機械的なものと思われるような質感もあったりしますけど、思いのほか情感を感じさせるものだなっていう印象がかねてからあって。作品を重ねていくにつれて表現の幅も広がってますし、歌声に乗った情感がより豊かになっていく様がアルバムでは感じることができますね。
「やっぱりそこはプロデューサーさんの力が大きいなって思います。歌っている最中は興奮してわからなくなってしまうこともあるんですけど(笑)、こういうふうに歌ったほうがもっと気持ち良く歌えるとか、ストーリーに見合った表情を思い浮かべながらとか、事細かにプロデュースしてくださって良いところを引き出してもらってるので」
──プロデューサーの方々も、Yun*chiさんができるコと見込んでいろいろ要求しているところはあると思いますよ。
「いやいや(笑)。本当に、毎回ハードルが高いなって思いますし、精いっぱいやっているので、その気持ちが聴いてくださる皆さんに感じてもらえればいいなあって気持ちは強くありますけど」