INTERVIEW(3)――ちょっとクセのあるものを作りたい
ちょっとクセのあるものを作りたい
──こだまさんは“Muffler*”という新曲も書かれていますね。曲は細川拓久真(Avec Avec)さんで、これまたYun*chiさんにとっては新鮮なアーバン・サウンドになりました。
「そうですね。拓久真さんはSugar's Campaignっていうユニットも組まれていて、そこでやられている歌モノがすごく魅力的だなあと思ってたんです。私は歌謡曲が好き、歌モノが好きなんですけど、その趣向を活かして、ちょっとクセのあるものを作りたいなっていうのが永遠のテーマとしてあったりするんですけど、そういうところで拓久真さんにお願いしたらどんなポップスが出来上がるんだろうな……っていうことでお願いして。拓久真さんはアーバンな感じとかシティー・ポップみたいな音とか得意とされてますけど、私もアーバンなオンナになりたいと思って(笑)、こだまさんにお願いした歌詞も細かくイメージを伝えました。曲をいただいたのが“Your song*”のキャンペーン中で、ちょうど街にイルミネーションが点きはじめた時期だったんですけど、お仕事の合間に外に出たら、カップルさんとかが楽しそうにしていて、〈私は仕事よ!〉って思いながらも〈イイなあ、素敵だなあ〉って思って見てたんです。そのときにストーリーが降ってきて(笑)。私、アニメも結構好きなんですけど、曲のヒロインは、『境界の彼方』というアニメの栗山未来ちゃんみたいに、ボブカットで髪の毛がふわふわしていて、メガネしてて、マフラーを巻いていて……っていうイメージで。そういう感じの女の子を好きになってしまった男の子のことを男の子目線で歌ったらどうだろうって思ったんです。もどかしいぐらい〈好き〉って言えなくて、時間ばっかり過ぎてしまって、ダメだなあ僕は、でも可愛いなあ……その〈可愛いなあ〉ってなるような描写をいっぱい入れたいってこだまさんにお願いしました」
──〈えんじ色のマフラーの はみ出した毛先眺めた〉っていうフレーズは、男子的にすごく共感できるところですし、曲の雰囲気はアーバンでもあり、80年代アニメのエンディング・テーマにあったような雰囲気ですね。で、続いての“Realizer*”(作詞・作編曲/COR!S)は、一転して女子っぽい気持ちを歌った曲で。
「はい、ふんわりとした可愛い曲になりました。ちょっとダメな女の子、恋に振り回されちゃう系の女の子の歌詞になってるかなって。ともすれば、ただのダメな女の子の歌になっちゃうところなんですけど、COR!Sちゃんが可愛らしさだったりスウィートさだったりをうまく織り込んでくれたので、ダメなコだけど許しちゃう、みたいな感じの世界観になったと思ってます。〈夢のなかで会えたら〉とか〈今夜だけは側にいさせて〉とか、心のなかで思ってても相手にもなかなか言えないことだと思うので、伝えられる魔法があって、恋が叶えばいいのになって、そういう可愛い歌が歌えたのが嬉しかったですね」
──終盤の“Love you*”(作詞/Yun*chi、HUM、作編曲/HUM)は、ピアノとストリングスで編んだシンプルなラヴ・バラードになりました。
「いままででいちばん声を前面に出した曲でしたし、音数も少なくて、歌うのが大変でした。時間はかからなかったけど、サウンド面はUTAさんにお願いしていて、歌心だったり、技術面はHIROさんにおんぶにだっこで、すごく勉強になりました。歌詞のきっかけは疑問から始まっているもので、付き合っている2人がだんだんと、いちばん最初は3か月ぐらいだと思うんですけど、このまま付き合い続けてもいいのかな?ってなるときがあると思うんですね。次の段階にいくと、結婚してもいいんだろうか、大丈夫だろうかっていうふうに、相手に期待したり求めたりするものが大きくなると思うんです。でも、それだけじゃないんじゃない?っていう疑問があって。私もたまに友達から恋愛相談とかを受けるんですけど、いまどれだけ相手を大切に思っているかとか、シンプルな思いこそが素敵なことなんじゃない? 未来に繋げていくにはそこが大切じゃない?って……そういうことを歌にできたらなって思ったんです。歌詞のイメージは、朝陽がテラスから射してきて、2人がいて、トースト焼いてとかっていう、ささやかな日常の風景を織り交ぜながら展開していったら伝わるかなって、平松愛理さんの“部屋とYシャツと私”をイメージしたところもあるんですけど、そこまではいかず、まだまだ未熟な2人の話にしたいなって」
──さて、駆け足でアルバム収録曲について伺ってきましたが、Yun*chiさんの饒舌ぶりからしてもアルバムの充実感が伝わってきます。
「そうですね。一曲一曲に大切なものが詰まっていて、時間をかけて作らせていただいたのが本当に良かったなあって。デビュー前からたくさんの方にお世話になっているので、ここまで作品を作れるようになりましたっていう恩返しじゃないですけど、そういうふうに受け取ってもらえるものになったらいいなあって思いながら作った作品でもあるし、ここでYun*chiを知ってくださった方にも、Yun*chiってこういう人なんだとか、こういう曲もあるんだとっか、日本昔話を一冊ずつ読むような気持ちで聞いていただけるといいなって思います……あっ、もっとカッコイイものに例えればよかったですかね(笑)?」