LONG REVIEW――Yun*chi 『Asterisk*』
フレッシュで現代的なサウンドに普遍性を与える歌声の魅力
デビューから1年あまり。2枚のミニ・アルバムと1枚のシングルを経て、ついに届けられた初のフルレングス作『Asterisk*』。エレクトロニックなダンス・ポップと、R&B寄りのミディアム・チューン、そして情感豊かなバラード――Yun*chiが提示してきた3つのスタイルを、代表的なナンバーとたっぷりの新曲によって改めて強く打ち出し、独自のポップ・ワールドを紡ぎ上げている。
ピアノやストリングスが開放的な空気を運ぶkz製の“Perfect Days*”など、アッパーな曲が並ぶ前半部分にも胸が躍るが、個人的に本作の肝と感じたのはミッドテンポの楽曲を畳み掛ける中盤の展開。エディットの切れ味も鋭い浅田祐介によるエレクトロ・ファンク“Vivace*”、浅田のメロディーをAvec Avecが浮遊感溢れるシンセでコーティングした“Dual*”、そのAvec Avecが手掛けた電化シティー・ポップ“Muffler”――アーバン・ミュージックに由来するグルーヴと、彼女のマジカル・ヴォイスが出会うことで生まれるアンニュイなスウィートネスが、これらの楽曲に特別な色彩を与えている。その独特の色合いは、他ではお目にかかれない類のものだ。
終盤に配されたオーセンティックなラヴ・バラード“Love you*”も特筆すべき1曲だろう。ヴォーカルの表現力だけで堂々と勝負できてしまえる強みと凄み。フレッシュで現代的なサウンドが詰まった本作だが、そこに普遍性を与えているのは、彼女の魅力的な声とシンガーとしての力量だと思う。