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第38回 ─ レディー・マーマレード

第38回 ─ レディー・マーマレード(3)

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2009/03/19   02:00
更新
2009/03/19   18:01
ソース
『bounce』 307号(2009/2/25)
テキスト
文/林 剛

コミュニティーに浸透する歌

 同時にパティは、アーバン・ゲットーの声として黒人コミュニティーに暮らす者を勇気づけてもきた。アウトキャストの“Gettomusick”に彼女の歌声が引用されたことも、その証左となろう。ちなみに今回のラベルの再結成アルバムは、以前そのアウトキャストが曲のタイトルに名前を引用していたローザ・パークス(公民権運動の母)に捧げる“Dear Rosa”を作ったことが発端だったという。そして……『Back To Now』は無事リリースされ、昨年12月にはNYのアポロ・シアターでラベルのライヴも遂行。ブルーベルズ時代に〈Sweethearts Of The Apollo(アポロ・シアターの恋人たち)〉と呼ばれ、同名のアルバムも出していた彼女たちにとってアポロは聖地であり、それはお参りのようなものでもあったのだろう。そういえば、若き日のルーサー・ヴァンドロスがブルーベルズのファンクラブを立ち上げたのも、当時アポロで彼女たちを見たことがきっかけだった。そのルーサーの葬儀で故人の母が書いた詩を朗読したパティは、ルーサーが共演したどんな女性よりも親しかったと言われている。

 1944年、パトリシア・ルイーズ・ホルテとしてフィラデルフィアで生まれ、現在もフィリーに住むパティ・ラベル。彼女は、歌手活動と並行して料理本や家庭用品などを出していることでも有名だ。そんな〈近所の主婦〉的感覚もまた人気の秘訣なのだろう。アレサ・フランクリンの貫禄、ダイアナ・ロスの優雅さ、ティナ・ターナーの野性味を備えたソウル・ママ。後にも先にもパティの代わりになる人はいない。