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SCOOBIE DO

夏が来れば思い出す、あの空気感をたっぷり含んだメロウな熱気に、ふたたび恋をする……

連載
360°
公開
2010/07/20   16:00
更新
2010/07/20   16:01
ソース
bounce 322号 (2010年6月25日発行)
テキスト
インタヴュー・文/久保田泰平

 

ScoobieDo -A

〈それは真夏の出来事だった。夏でなければ起きなかったかも知れない。夏は時々、何かを狂わせてみたりするのだから〉──(山際淳司「八月のカクテル光線」より)。

ゴキゲンなジャケットもさることながら、SCOOBIE DOのニュー・アルバム『何度も恋をする』のそこかしこから立ち昇る〈夏〉の空気に身を委ねていたら──オカモト“MOBY”タクヤ(ドラムス)が敬愛する──いまは亡きノンフィクション・ライターの名篇、その書き出しがふと頭に浮かんだ。そう、このアルバムからは何かを狂わせてくれるようなムードが、極上のグルーヴという名の眩しい光線に乗っかって容赦なくこちらに向けて乱射されるのだ。

「テーマとして、最初から〈夏〉っていうのが漠然とあって。夏っていうと〈何かありそうだぞ〉って色っぽい期待をするんですよね、男子って。それって中高生の多感な時期だけで、大人になったらそう思わなくなるんだろうなって思ってたけど──僕は今年35になるんですけど、いまだ夏になると〈何かあるんじゃねえか?〉って期待するんです(笑)。男っていくつになっても〈男子感〉が抜けないっていうか、〈少年感〉みたいな綺麗なものとは違う、もっとえげつない男の本能っていうのは一生残っていくものなのかなって気がするんですよね。そういう大人の男の男子感に含まれているしょうもなさみたいなものとか、情けなさとか、笑っちゃう感じとか、愛すべき人間像みたいなもの、それと男のやせ我慢的な切なさや辛さから派生するメロウな感じを、〈夏〉っていうテーマの隙間から滲ませられればいいなあって思ったんですよ」(マツキタイジロウ、ギター:以下同)。

最上級のエンターテイナーぶりと豊かなグルーヴを生み出す演奏力をフルに発揮したライヴ・パフォーマンス、その空気感を存分に注入したファンキーな楽曲たちだけでなく、思わず胸がキュンと締め付けられるメロウ・ナンバーでも秀でたチャームを放ってきたSCOOBIE DO。2001年作『beach party』や2004年作『Beautiful Days』がそうであったように、『何度も恋をする』もまた彼らのメロウ・サイドを夏の匂いと共に際立たせているアルバムなのである。

「最近の若手バンドって、ものすごくハイパーというか、音にしてもすごくパンパンに詰まってるものが多いし、で、何しろ派手だし。そういうのは何かイヤだなって思えてきて、そこはいまの自分たちがやることじゃないだろうなっていう気がしたんですよね。前作の『SPAKLE』まではハイパーとまではいかないですけどサウンド的にはわりと詰め詰めにして、ライヴでいかに真価を発揮するかっていう楽曲を重点的に作ってきた感じだったんです。だけど今回は〈SCOOBIE DOとは何たるものか?〉をもう一度提示するようなアルバムを作らないといけないんじゃないかっていう漠然とした思いがあって。それが何かって言ったら、メロウ・サイドを際立てることだったんですよね。メロウ・サイドはCHAMP RECORDSを立ち上げてからは重点的にやってなかったし、どっちかというと現場でどんだけ効いてくるかっていう楽曲をめざしてやってたところがあったんで、そこは去年までで一段落したかなっていう。だから次も引き続き同じような路線でやってしまうのは逃げかなっていう気がしてたんですよね。だからってライヴ感を度外視してっていうわけではなくて、ここ最近の流れで好きになってくれた人たちっていうのももちろん視野に入れつつ、そういう人たちにアピールできるメロウさ、自分たちが本来持ってるメロウさとか切ない部分だったり、黄昏れた部分だったりっていうのをちょっと提示したいなっていうことなんですよ」。

〈夏〉〈メロウ〉とくれば、クール&ザ・ギャング“Summer Madness”的な70〜80年代ソウルのアーバンかつクールな名曲たちが思い浮かんだりもするが、そこは彼ら。マツキが言うところの〈男子感〉を含ませた楽曲には格好つけても決してキザにならない、敷居の低いダンディズム、それすなわち〈SCOOBIE DOの揺るがぬ本質〉が貫かれている。

「そう、下世話な感じというかね(笑)。例えばサザンオールスターズだったり、筒美京平先生が書いてたC-C-Bとか少年隊とか、85〜86年あたりの楽曲の切ない感じ、胸キュンな感じっていうのが自分のなかで本能的にいちばんしっくりときてるからなんでしょうね。ソウルにしてもロックにしても、それと同類の切なさがあるものを好んで聴いてたから。あと、あの頃の歌謡曲ってすごく上っ面感があるというか、歌詞にしても読めば読むほど軽薄だったりするんですよ。だけど、上っ面であればあるほど、その裏に深いものがあるような気にさせられて。そういう、最初から深みみたいなニュアンスを滲ませない歌詞っていうのもすごく好きで。SCOOBIE DOの歌詞って結構抽象的なのが多かったりするんですけど、今回の場合はほとんどの曲が〈ひとつのシーン〉を歌ってるものなんですよね。そういうもののほうが聴き手は自分のものとして聴きやすかったりするかなあって思ったりもしたし、いわゆるドライヴ・ミュージック的な軽さというか、そういうものをいまのSCOOBIE DOがやるっていうのにおもしろさがあると思うんですよね」。

 

▼SCOOBIE DOの参加作品を紹介。

左から、THE YELLOW MONKEYのトリビュート盤『THIS IS FOR YOU〜THE YELLOW MONKEY TRIBUTE ALBUM』(ARIOLA JAPAN)、ボ・ディドリーのトリビュート盤『BO DIDDLEY TRIBUTE ALBUM GRAND - FROG STUDIO PRESENTS "HEY! BO - SLINGER!!!"』(DECKREC)