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オレらの夏フェス復習帳 2010

LIVE REPORT――THE BAWDIES、Ovall+45trio+Conguero Tres Hoofers、BROKEN SOCIAL SCENE、MUSE、!!!

連載
ライヴ&イベントレポ
公開
2010/08/25   18:02
テキスト
文/岡村詩野、加藤直子、金子厚武、鬼頭隆生、土田真弓

 

audience
Photo by 宇宙大使☆スター

 

★11:30~ THE BAWDIES @ WHITE STAGE

今年の〈WHITE STAGE〉の幕開けを飾ったTHE BAWDIES。その年でもっとも勢いのある若手の日本人バンドが務めることの多い朝イチの〈WHITE〉に、彼らほどの適役はいないと言っていいだろう。ここ2、3年での日本において、ロックンロール・バンドの台頭が遂に目に見える形で爆発した2010年の上半期――その中心にいたのが紛れもなく彼ら、THE BAWDIESだったのだから。暗くて狭いライヴハウスの熱気こそが似合うロックンロール・バンドに、晴れやかな大自然のなかのステージはどうなんだろう?という思いも、いまの彼らの勢いの前には一切関係なし。一度音が鳴り出して、4人が躍動し、ROYがあの声を響き渡らせれば、そこがどこであろうとダンスフロアに早変わりし、朝早くから集まった大勢のオーディエンスを見事に踊らせていた。

それにしても、小気味よくMCを挟んだ、テンポ感のいいステージ運びは実にお見事。リズム&ブルース・テイストの強いルーツ志向のロックンロールをいまに鳴らすという彼らの試みは、楽曲の良さや演奏の質はもちろん、このエンターテイメント性もあってこそ成し遂げられることなのだろう。ちなみに、会場内でもっともよく見かけたバンドマンでもある彼ら。うんうん、やっぱりお客さんと同じ目線で遊んでなくちゃ、あの雰囲気は作れないよね。*金子

 

★14:00~ Ovall+45trio+Conguero Tres Hoofers @ ORANGE COURT

苗場に到着して一発目に観たのがOvall。開演に遅れること数分、〈ORANGE COURT〉に向かう道すがらだんだん近付いてくるスウィートなサウンドで早くもとろけつつ、ゲートを潜った先に広がっていたのは、深めのリヴァーヴが施されたシンセとギターが聴き手の意識を瞬時に飛ばすソウル宇宙。オーディエンスは意外と女子率が高く、それぞれが心地良さげに身体を揺らしている。

〈origami PRODUCTIONのショウケース・ライヴ〉とメンバーが語っていた通り、この1時間はOvall→45trio→Conguero Tres Hoofersの順でシームレスなステージを繰り広げるという趣向。2番目に登場した45trioはアコギ+コンガ+タップダンスという構成で、会場全体をパーカッシヴにアゲていく。中盤では、ギターのソロ曲“Mother”も。アコギを爪弾きながらボディーを叩くことで(?)メロディーとリズムの一人アンサンブルを披露し、観客たちを大らかなグルーヴで包み込んでいた。

3番手を引き受けたConguero Tres Hoofersは、ドラムス+エレピ+ウッドベースのトリオで3バンドのなかではもっともジャジーな匂いが……と思いきや、「体力温存なんて言葉、みんな知らないよね!?」と言い放つやいなや、オートチューンのスキャットや鍵盤ハーモニカのソロなどを織り込んだ楽曲でファンキーな熱を注入。かと思えば、ピアノのリフが可憐に歌う“I Believe”でメロウにキメる。

最後はOvallと45trioの面々もステージ上に現れ、タップダンサーのジャンプを合図に出演者全員でフィニッシュ。初見の人も多かったようだが、口々に〈良かったね!〉と言いながら笑顔で移動していく観客たちの姿が印象的だった。*土田

 

★20:30~ BROKEN SOCIAL SCENE @ RED MARQUEE

アルバム以上にライヴが圧倒的に素晴らしい。このバンドのそんな魅力が今回も爆発した。ニュー・アルバム『Forgiveness Rock Record』はジョン・マッケンタイア(トータス他)がプロデュースを手掛けたことによって、音により深みと奥行きが加わった大傑作だったが、どうやらライヴはまた別のヴェクトルで力を蓄えてパワー・アップしていたようだ。メンバー不定形とはいえ今回は9人編成。ステージはその最新作からの“World Sick”でスタートした。元々澱みのない、オーディエンスと一体となっていくようなストレートなパフォーマンスが身上のバンドだが、この日は最初からエンジン全開で惜しげもなくエネルギーを放出してきてくれる。初来日した頃は、まだやや大味なところがあったが、パワーは維持したままで適度に硬軟をつけた演奏はそこにいる誰もを引き込んでいく。ケヴィン・ドリューもブレンダン・カニンガムも人なつこい雰囲気を持っているものの、最高潮の盛り上がりのままアンコール(!)で“KC Accidental”を披露してもまったく緩むことがなかった。もはや〈カナダ代表〉という冠など要らない、世界を代表するライヴ・バンドになったことを証明した歴史的な瞬間だったと思う。*岡村

 

★21:30~ MUSE @ GREEN STAGE

 

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Photo by Masanori Naruse


前回(2007年)はトリじゃないにも関わらず、それ並のスケールでヤラかしてしまった(良い意味です)スタジアム級のバンドですが、今年はついに身の丈に合ったヘッドライナーで登場! 冒頭の“Exogenesis Part.1”から期待通りの規模感のサウンドで何だか嬉しい。しかしどういうテーマなのか(宇宙?)、フロントマンのマシュー・ベラミーは真っ赤なスーツにギラギラ光るメガネ、ドラムスのドミニク・ハワードは気合いの入ったシルバーの全身タイツ、そしてベースのクリス・ウォルステンホルムは地味服で登場……っていうツメの甘さもチャーミングです!

 

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Photo by Masanori Naruse

 

セットリストはこれまでの代表曲を連発するスタイルで、まったく期待を裏切らず。中盤のレーザー光線も眩しい“New Born”“Hysteria”あたりで最初の絶頂を迎え、オーディエンスは合唱しまくりです。また、残念ながら星空ではなかったものの“Starlight”ではみんなでお約束のハンドクラップなんかしてキャッキャしたり、重量級のアンサンブルがお腹にくる“Stockholm Syndrome”で感動してたらあっという間に本編終了。〈まだアレとかアレ演ってないよね?〉的なワクワク感を残しながらアンコールへ。お馴染みのバルーンも飛び出したお待ちかねの“Plug In Baby”に狂喜し、ラストは広い場所じゃないと意味がない、現在ミューズ史上最高のスケール感を持つ“Knights Of Cydonia”でドカンと豪快に締めていただきました。

だがしかし、観たいものはすべて観られたし、相変わらずすごく格好良いステージなんだけど、今回はどうも心に何かを残さなかったな……というのは非常に残念な私のワガママです。それもこれも天気が悪かったせい、きっと! *加藤

 

★22:10~ !!! @ WHITE STAGE

 

!!!
Photo by Yasuyuki Kasagi


コリーヌ・ベイリー・レイの優美なステージの余韻が残る雨上がりの澄んた空気を切り裂いて、!!!の演奏が始まった! メンバー変更を経て現在の7人となり、新作『Strange Weather, Isn't It?』では洗練された新たなモードを提示していた彼らだが、はたしていまのバンドのケミストリーはいかに……などと思っていたら、強烈なリズムを叩きつけてたちまち場を掌握。プリミティヴなビートが巨大な音の渦を巻き、観客は何かに憑依されたかのごとく一心不乱に踊り続ける。ダイナミックにうねるファンクネスの奔流に乗って、ショートパンツ姿のヴォーカリスト・ニックがヒゲダンス風の奇妙な動きを繰り返し、ステージから飛び降りて観客を煽れば、女性シンガーのシャノンはタンバリンを鳴らし、猛々しいシャウトとハードなダンスを繰り出す。森と深い闇に囲まれた〈WHITE STAGE〉で観たこの光景は、さながら原始宗教の祭儀のような強い陶酔と昂揚をもたらすパフォーマンスだった。曲目は“AM/FM”“The Most Certain Sure”など新作の楽曲を中心に、ロキシー・ミュージック“Virginia Plain”のカヴァーも挟んだりと、フジならではのサーヴィスもあり。超強力なミュータント・ポスト・パンクで満場の観客をカッ飛ばした!!!は、やはり当代最強のライヴ・アクトだった。*鬼頭

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