リリカルスクールに耳貸すブーム♪ってことで、T-Paletteに移籍して心機一転した6人から、待望のニュー・シングル『そりゃ夏だ!/おいでよ』がドロップ! 残暑も吹っ飛ばすくらいのパーティーへ急ごう!
左から、YUMI、MEI、AMI、ERIKA、AYAKA、MARIKO
マジで大傑作な『CITY』を発表した矢先、グループ名の改称とT-Palette移籍を発表したtengal6……改めlyrical school。それから数か月、暑い夏に磨かれた無敵の6本マイクから待望のニュー・シングルが到着です。フレッシュ・プリンセスなサマータイムを賑やかなジャングルで演出する“そりゃ夏だ!”、彼女たちの信条ともいえるパーティー讃歌の“おいでよ”——ここではそんな最高の2曲を手掛けたtofubeatsに引き続き語ってもらいました。
本気度を見せたかった
――そもそも“プチャヘンザ!”を手掛ける前からtengal6についてはご存知でしたか?
「〈ラップ+アイドル〉って嫌いな要素がなかったので、出だしの頃から注目していました。“プチャヘンザ!”は、もともとキム(ヤスヒロ)プロデューサーが僕の曲を聴いてくださっていて、〈ここだ!ってタイミングでオファーしたかった〉とは仰ってたんです。そのタイミングがファースト・シングルだったんだと思います」
――まさにそのタイミングでtengal6に注目したという人は本当に多かったですね。
「ラップを重点に置いたアイドルとして、上手さはさておき、掛け合いでスピード感を出して本気度みたいなのを出せればと思ってましたね。ピアノを使ったヒップ・ハウスを土台にするというのは決めていて、そこに後からギミックをじゃんじゃん盛り込んでいった感じです。背景としてもアイドルがふざけてるのではないというのを示すためにドラム・ブレイクから声ネタ、スクラッチやディスコ・フレーズのちょっとした引用からMatsumoto Hisataakaa氏にお願いしたマスタリング(シングルのみ)まで、文脈をとても意識して制作しました」
――リリックもすべて書かれたわけですが、いわゆる〈作詞〉に取り組んだのは初めて?
「他人に歌詞をちゃんと提供するのは“プチャヘンザ!”が初めてだったと思います。韻を踏みつつ整合性を持たせるのに加えて、個々のキャラもあるので本当に難しかったです。ハッとさせるフレーズを盛り込むバランスとかの参考にハロプロ楽曲などの詞を改めて見直したりもしました」
――誰がどの部分をどんなニュアンスでラップするのか、かなり細かくディレクションされたのではないですか?
「その時点ではまだメンバーに会ったことがなくて、キムP経由で6人に自己紹介をメールしてもらい、同時に『まちがう』も聴き込んで、それらを踏まえて自分なりのキャラ設定表みたいなのを作ってパートを書いていったんです。若干の誤差はありつつもそれに合わせてディレクションさせてもらいました。『CITY』以降はメンバーがどんな感じなのか少しずつわかってきたうえで書いてるので、“そりゃ夏だ!”とかのほうが個人的にはパート割りはしっくりきてますね」
――リリックに出てくる女の子はtofubeatsさんの理想の女の子像で、作詞はそれを立体化する作業だと言えたりします?
「もちろん女の子にこういうこと言ってほしいなっていう僕の意思とかが結実したものですが、もちろんいろんな人が共感してくれたらいいなという前提には立ってますよ(笑)。あとそれに加えて、本人たちが口にして嫌じゃない言葉を選ぼうというのは基本的にありますね」
6人の成長と自己表現
――そして、今回の『そりゃ夏だ!/おいでよ』に至るわけですが、まずグループ名がlyrical schoolに変わることになりました。改名を知った時は率直にどうでしたか?
「残念っちゃ残念ですが(笑)、名前が変わっても中身は同じですし、そこまで気にしていません。逆に“プチャヘンザ!”の最後のサビ前の〈テテテッテテッテテンギャルシックス!〉ってのが〈リリリッリリッリリリカルスコー!〉になると思ったらちょっとおもしろいなとか思ってました」
――移籍先のT-Paletteについてはどんな印象でした?
「LinQさんとかNegiccoさん——昔から聴いてましたが“君といる街”が大好きです——など、良い曲がいっぱい出ててすごく良いと思います。Negiccoさんのベストとか普通に買ってましたし、そこにリリスクちゃんが加入して本当にびっくりしました。LinQの深瀬(智聖)さんとのヒップホップ的な絡みも今後あるとおもしろそうですね。偉そうなこと言いますが、リリスクにはバニビ姐さんやNegicco姐さんに刺激を貰いつつ、がんばってほしいです」
――です。では、“そりゃ夏だ!”について……残暑にも対応しためちゃくちゃ爽やかなサマーソングになりました。
「夏の終わりに出るシングルということで依頼をいただいて、その直後に改名するという報を受けたと思います。〈盛り上がるサマーソングを〉という要望があったのでそこから始めて、あのジャングルと普通のビートが絡み合う楽曲になりました。“そりゃ夏だ!”っていう曲名はM・ドックの“It's The Summer Thang”を聴いてて思いついた和訳です。最初から歌詞に入っていた言葉で、タイトルはまた違ったんですが、キムPの鶴の一声で決まりました。意識した点としては、リリスクとして初のシングルであることと、TIFみたいな夏のイヴェントで盛り上がる感じのコール&レスポンスが実現できることの2つが大きかったです。これまで通りたくさんのギミックも入ってますので、ぜひ楽しんでほしいですね」
――もう1曲の“おいでよ”は、『CITY』の物語からの連続性があるようにも思える作りですね。
「そもそも何の指定も出る前にデモとしてこの曲をA面にどうですか?と提出していました。ので、個人的にはこちらも思い入れが大きいです。tengal6時代は他人をわかりやすく励ましたり、〈元気を出して〉的な曲ってあまりなかったと思うんですが、ここではそれをやってみました。〈まだまだ続くものがたり……〉っていうリフレインで終わるのは、リリスクとしてもこれから長くやってねという僕のささやかなメッセージですね(笑)」
――tofubeatsさんの考える、リリスクの最大の魅力ってどこにありますか?
「全員がほぼ未経験だったラップっていうツールを通じて6人の成長が見られるのはもちろん、そのなかにある〈自己表現〉みたいなのも徐々に身につけていってるのがおもしろいんじゃないでしょうか。ラップって、僕らがどんな歌詞を用意してもどう歌うかはライヴのたびに変わるわけですし。プロのラッパーでもステージごとにフロウが同じにはなりませんよね。そういうなかで本人たちがスタイルを模索して、変化していってるのを目の当たりにできるのがとても楽しいと思います。これからそれぞれのスタイルが出来上がってきたら6人の色ももっとバラけてくるでしょうし、あとリリックを書きはじめているメンバーもいるので、そのうちメンバーの心の中も覗けるのかなーと思うとめっちゃ楽しみですね」
▼tengal6名義での作品。
左から、2011年のミニ・アルバム『まちがう』、2011年のシングル“プチャヘンザ!”(共にReleaserush)、2012年のフル・アルバム『CITY』(BOOTROCK/ファイル)