Sepultura(セパルトゥラ)15枚目のフルアルバム『クアドラ』。日本初回限定盤のみ2018年5月の来日公演を収録したライヴCD付き
セパルトゥラほど様々なエクストリーム・メタルのサブジャンルに影響を与えたバンドはいないのではないか。マックス、イゴールのカヴァレラ兄弟がセパルトゥラを結成したのが84年。同郷のオーヴァードーズとのスプリットLP『Bestial Devastation』(85年)、デビュー・アルバム『Morbid Visions』(86年)は、当時としては非常識なまでの速度で多くのスラッシュ・ファンの度肝を抜いただけでなく、後のブラック・メタル勢にも多大なる影響を与えたレジェンド作。その後、現在バンドの主導権を握るアンドレアス・キッサーが加入し製作された『Schizophrenia』(87年)、『Beneath the Remain』(89年)、『Arise』(92年)はスラッシュ/デスの名盤として、今なお多くのファンに愛されている。さらに93年の『Chaos A.D.』、ロス・ロビンソンをプロデューサーに迎えた96年の『Roots』では、いわゆるグルーヴ・メタルの礎を築いた彼ら。90年代というヘヴィ・メタル暗黒期、セパルトゥラは時代に迎合するのではなく、自ら新時代を切り開いてみせたのだ。
『Roots』リリース後、マックスが脱退。後任として黒人ヴォーカリスト、デリック・グリーンが加入する。新体制で製作された『Against』(98年)では『Roots』のワールド・ミュージック的要素を発展させつつも、ハードコア・パンク的感触を強化、新生セパルトゥラの誕生を強くファンに印象付けた。06年に今度はドラマーのイゴールが脱退。新ドラマーを迎え再びコンセプト・アルバムという形式をとった『A-LEX』(09年)をリリース後、ヨーロッパ最大手のNuclear Blast Recordsへと移籍。13年の『The Mediator Between Head and Hands Must Be the Heart』は久々のロス・ロビンソン・プロデュース作品として話題になった。16年には『マシーン・メサイア』をリリース。スラッシュからグルーヴ・メタル、ワールド・ミュージックと言った彼らお得意の要素に加え、シンフォニックなアレンジメントまでも導入、新たにプログレッシヴな一面を見せ、ファンを驚かせた。
前作から3年、この度リリースになるのが15枚目のスタジオ・アルバム、『クアドラ』だ。「『Beneath the Remains』や『Arise』のような、オールド・スラッシュのフィーリングを復活させたい衝動に駆られた」というアンドレアス・キッサーの言葉に心を動かされないスラッシャーなどいないだろう。もちろんセパルトゥラのことだ。単に過去を振り返るだけで終わるはずがない。トライバルなパーカッション、シンフォニック・アレンジメント、さらにはクワイヤやクリーン・ヴォーカルなどもふんだんに取り入れられている本作で、再びセパルトゥラは現在進行形のバンドであることを我々に印象づける。ジョン・ノースの『Quadrivium』という本にインスパイアされたというそのテーマは、「4」という数字。アルバムも4つのパートに分けられ、第1部からそれぞれピュア・スラッシュ、トライバル、実験的、メロディックという音楽的特徴を持つ構成になっている。ダイナミックなデス/スラッシュ・パートとクワイヤやトライバル・パーカッションを違和感なく融合させるセパルトゥラ・マジック。「オールド・セパルトゥラのエコーも聴こえるだろう。だけどこれは2020年のセパルトゥラという経験豊かで洗練された獣の姿だ」とアンドレアスが言うとおり、激しさと洗練が高次元で融合された本作は、オールド・ファン、最近のファンどちらも満足させる素晴らしい仕上がり。前作に引き続き、イエンス・ボグレンがミックス、プロデュースを担当。全スラッシュ・メタル・ファン必聴。
【収録曲】
CD収録曲
01. アイソレーション
02. ミーン・トゥ・アン・エンド
03. ラスト・タイム
04. キャピタル・エンスレイヴメント
05. アリ
06. レイジング・ヴォイド
07. ガーディアンズ・オブ・アース
08. ザ・ペンタグラム
09. アウテム
10. クアドラ
11. アゴニー・オブ・ディフィート
12. フィア・ペイン・ケイオス・サファリング
日本盤限定2枚組フルライヴCD
《2018年5月23日 @ duo music exchange》
[CD 1]
01. アイ・アム・ジ・エネミー
02. ファントム・セルフ
03. カイロス
04. テリトリー
05. デスパレイト・クライ
06. スウォーン・オース
07. アゲインスト
08. チョーク
09. ボイコット
10. マシーン・メサイア
11. アイスバーグ・ダンセズ
[CD 2]
01. インナー・セルフ
02. レフューズ/レジスト
03. ポリシア
04. アライズ
05. スレイヴ・ニュー・ワールド
06. ウルトラセブンの歌
07. レジスタント・パラサイツ
08. ラタマハタ
09. ルーツ・ブラッディ・ルーツ
【メンバー】
アンドレアス・キッサー(ギター)
デリック・グリーン(ヴォーカル)
エロイ・カサグランデ(ドラムス)
パウロ Jr.(ベース)
セパルトゥラのオフィシャル・ワイン
2018年12月、初のオフィシャル・ワインのリリースが発表されました。バンドはワイン造りに全面的に関わっており、素っ気ないブランド名は品質へのゆるぎない自信を表しています。赤ワインと白ワインの両方とも、ポルトガル南部の穀倉地帯、ワイン好きにはコルクの一大生産地としても知られるアレンテージョ地方の有機栽培ブドウを原料としています。同地方は冬と夏の寒暖差が激しく、また日照量が多くて乾燥していることで、様々なタイプのブドウが生産され、ポルトガル・ワインの一大産地となっています。
セパルトゥラがオフィシャル・ワインのために選んだブドウは、どれもポルトガル土着の品種で、白ワインにはアンタン・ヴァズ、ロウペイロ、フェルナン・ピレスが用いられており、爽やかな酸味とバランスの取れた味わい、そして若いワインですが非常にアロマティックなのが魅力です。また赤ワインにはアラゴネス、トリンカデイラ、そしてカステランが用いられており、深みのある紅色、濃厚な果実味といった特徴が見事に表現されたフルボディの力強いワインとなっています。
タグ : ハードロック/ヘヴィメタル(HR/HM) TOWER OF THE BEAST
掲載: 2019年12月18日 15:01