インタビュー

INTERVIEW(1)――いびつなものでも回転する

 

いびつなものでも回転する

 

──このバンドの結成以前のことから訊きたいんですが、その頃は3人とも大阪にいて、威呂波とかnaam’とかのバンドをやっていたそうですね。

新後桂祐(キーボード/シンセサイザー)「僕は普通の(ロック・)バンドから入って、ノイズのバンドとかもやるようになって、そういう変な音も出したいって感じになりまして。それで自分のバンドの威呂波を作ったりしたんです。大阪はごっちゃなんですよね、ノイズやってる人もロックやってる人もポップスやってる人も、みんないっしょで(お互いに)結構知ってるみたいな」

齊所賢一郎(ガット・ギター)「僕は単なるギター好きの少年って感じで。学生の時にジャズ研に入ってジャズをずっとやってて、そのなかで、この二人とも出会いがあって。それで、ジャズは無理やなと。ジャズがやりたいわけではなくて、けっこう早い段階でガット・ギターに移行して、あまりエレキ・ギターを弾かなくなって、なんかやれることはないかなと思っていたところに、naam’や威呂波とかでやるようになった」

濱田真一郎(ドラムス)「大阪に〈北摂音響〉という、威呂波やnaam'も参与した、すごく曖昧な団体があって。PARAやCOMBO PIANOの千住(宗臣)くんなんかは高校も大学もいっしょで、naam’では僕とツイン・ドラムもやってました。そういう大阪の〈ゼロ世代〉と言われるような人たち、あふりらんぽとか。あのへんの連中とよくやってました」

──それで2008年頃に3人とも東京に出てきて、NETWORKS結成に至るわけですか。

新後「威呂波はまだ続いていたし、バンドはずっとやりたかったので、こっちにいて、このメンバーでなんかやろうやってことで、結成したんです」

──結成時、〈楕円運動のダンス音楽〉を念頭に置いていたそうなんですが、どうしてそういうアイデアを思いついたんですか。

新後「4拍子って〈丸のイメージ〉なんですね。5拍子とか7拍子にするとそれがグッと歪まざるを得ないんです。アクセントとかが変化していくような感じで。もともとダンス・ミュージックをやりたくて、ドンドンっていう4つ打ちもいいですし、ボアダムスのトランシーな感じもいいですし、あとアフロ・ビートみたいなんとかもあるし、そういういろいろあるなかで、なんで全部4やねんっていうのがあって、どうにかして、いびつなものでも回転するようにできないかなって、これやりましょうよってことになったんです」

 

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──そういう、いびつなものをやりたがる、オルタナティヴな資質があったと?

新後「そうです。心はたぶん狭いと思うので、許せないと歪みやすい(笑)」

──そういう変拍子とかポリリズムとかっていうと、DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENやPARAがあったわけですけど、そういうものからの影響もあったんですか。

新後「ありました。そこはいっぱい影響を受けていると思います。PARAは特に自分らの周り(にいたバンド)だったし。僕らは音色だったりリズムだったり、やってきたことをいろいろと混ぜて、自分らがおもしろいみたいな感じのものをやれれば、と思って。とりあえず、5とか7とか、ダンスにならないような〈何これ?〉みたいな感じでも、人に動いてもらいたいんですよね。そういうものをやるためには、イメージとしては楕円っぽくなるような感じに近付けていくような音楽をしたら、おもしろいなってところで」

齊所「僕も変拍子はもともと好きで。真っ当なジャズをやらなくなったのも、もっと変なものに興味があって。もうできているものは、その大家がやればいいと思ってて、どうせならできることをやろうと。だから新後(宇宙大仏)がそう言った時に、〈そうか〉って思って。そういう面ではむしろ、可能性を――変拍子の歪んだ感じを確かめながら、っていうやり方ですよね。ガット・ギターというのは、爽やかな文脈に使われたりとかあるじゃないですか。個人的には、そういう文脈から脱したい気がします」

濱田「さっき言ってた真円じゃなくて楕円っていうのも、(例えば4つ打ちに対する)人間の奴隷感覚っていうんですかね、知らず知らずのうちに飼い慣らされている感というか。そういう4つ打ちで体が動く身体感覚の他にも、楕円で動く身体感覚ももちろんあるはずで、そこには気付かないじゃないですか。その気付かない部分に熱を感じるような、感じさせるような、そういう楽しみはありますね」

 

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2010年05月21日 18:40

更新: 2010年05月21日 18:43

インタヴュー・文/小山 守