INTERVIEW(4)――変拍子でキラキラしてる
変拍子でキラキラしてる
──結成当初に〈最終的に祈祷になること〉が念頭にあったそうなんですけど、そういう〈草木もダンスする〉とか多幸感とかが〈祈り〉に繋がるということなんですか。
濱田「自分らがやってるのは、シンプルではない、非常に複雑なものだと思うんですけど、すごくシンプルに有機無機問わず、音の振動がすべてに伝わるような、そういうものになりたい、ということです。それが祈りです」
齊所「それを言葉にするとしたら、〈祈り〉という単語がしっくり来るんだろうなと。3人のなかで、そういう共感をしているんですよね」
新後「スピーカーから出た音は振動になるので、いい振動を出そうね、っていうことを、最初に話していたんです。〈あの音楽いい〉とか前評判とか、そういうことじゃなくて、単純にいい振動になる音楽をやろうねって」
──やってることはすごく難しくて数理的なのに、意識としてはすごく直感的であり本能的ってことですか。
濱田「そうですそうです、そういう感じです」
──資料によるとこのアルバムは〈活動範囲の拡張が目的〉ということで制作されたそうですけど、完成形っていうより現状報告っぽい印象があるんですよね。スタイルはひとつできていると思うんですが、まだ底を見せていない感があるというか。
新後「そうですね。まだまだ途中で、もっとやりたいこととか、やれるだろうことはあるんですけど。一旦これで出させてもらって、先に関しては、どんどん変わっていくだろうと思うので、ここが到達地点です、みたいなところはないですね。もっともっと良くなると思います。方法論的なところでは、今回は〈変拍子でキラキラしてる〉みたいなところになったんですけど、もっと全体として、ハッピーな感じにはできるかなあと思うんです」
齊所「祈祷という言葉に繋げて言うなら、ワールド・ミュージックでは、ホントに神様のためにやってて、いまみたいなフォーマットになりました、みたいなのってあるじゃないですか。売れたとか売れないとか、カッコ良いとかカッコ良くないとかは置いといても、ただただ長い時間、お祈りのためにやってきたらこのスタイルに落ち着いた、みたいなものがある。自分らは今後、変わる可能性も残ってるんですけど、その時にまだ僕のガット・ギターが必要であればと(笑)、そう思ってるので。パッと聴いてわかるとか構造的とか機能的とかは、あまり考えていなくて、やっぱり全体として一歩進めたらって思いますね」
──ちなみに、このバンドにとっては、メタファー的なものとしての神という存在はあるんですか。
齊所「メタファーとしての神になるようなものは、たぶんあると思います。神とは呼ばないけど。いまはそこに向かって、自分たちのやってることを純化していく過程ではあると思っていますね」
濱田「神というか、何かを招く感覚というか。音に隙間を作って、そこに何がしかを呼び寄せるような……隙間のあるところに何かが入り込む可能性を作るという感じですね。詰まったものよりも隙間のあるほうが、聴くほうからのコミュニケーションもしやすいと思うので」