LONG REVIEW――NETWORKS 『white sky』
音が似ている、という基準ではないことをあらかじめ断っておきたいが、NETWORKSのファースト・アルバム『white sky』を聴いて思い出したのは、アニマル・コレクティヴ『Merriweather Post Pavillion』やトクマルシューゴ『ラムヒー』、さらにはkenmochi hidefumi『Falliccia』やヨンシー『Go』などの諸作である。共通点は〈原始的なグルーヴ〉と〈抗しがたい祝祭感〉を体感できる作品、という点。燦々と降り注ぐ多幸感やトランス感覚に意識を委ねると、いつのまにか身体がリズムを取っている。
例えば、朝露に濡れて艶めく緑の葉からポタポタと滴り落ちる雫。そのリズム。風に吹かれた木々の枝がざわざわと揺れる。そのリズム。川面に太陽光が反射してキラキラと輝く。そのリズム。色鮮やかな花々の間を転々とする虫の羽音が発する振動。そのリズム。どこか楽園にも似た、美しくスピリチュアルな光景が広がるこの地上の果て。そのなかで祝祭の儀式を執り行っている見知らぬ民族が、込み上げる歓喜に導かれて身体を揺らし、飛び跳ねる。そのリズム――。そんなプリミティヴなリズムの集合体を、天然のポリリズムを音像化したかのような――本作を聴いていると、そんな想像を掻き立てられる。そのアングルをよりマクロに引いてみれば、ジャケットに描かれた球体に結び付くのかもしれない。
出自についてはインタヴュー中で言及しているので割愛するが、NETWORKSとは、そんなファンタスティックな音世界をガット・ギター、キーボード&シンセサイザー、ドラムスを担当する3人だけで構築するバンドである。全員がすさまじいテクニックを保有しているからこそ生み出すことのできる微細な音の粒子を響かせ、弾ませ、漂わせ、煌めかせながらミニマルにリフレインし、変拍子on変拍子の拍と転調をも流れるように制御する。そうして現出するダンス・ミュージックは、機械的な統制と数学的な緻密さで編み上げられていながら、聴き手の血を無条件でさざめかせるものだ。彼らが提唱するところの〈楕円のリズム〉が一斉に転がり出し、針の先のようなタイミングでクロスした瞬間に派生するある一定のリズムが、昂揚感に満ちた筆者の鼓動とシンクロする。
このサウンドを野外のステージで体験できたら、昨年の〈フジロック〉のアニマル・コレクティヴと同等の至福を得られるような気がする。あの、音のレイヤーが山々の間に木霊しはじめた途端にうっとりするような異次元に連れていかれ、プレイが終わると同時にふと現実へ帰還したような感覚。『white sky』はそう言い切っても過言ではない、初作にして傑作である。