INTERVIEW(3)――草木も建造物もダンスしたらいい
草木も建造物もダンスしたらいい
──アルバム『white sky』は、いま話した変拍子とかポリリズムだけじゃなくて、ミニマルだったりトランスっぽい展開になったり、いろんな要素が入っていると思うんですよね。そのなかでどれかがドーンと前面に出るわけじゃなくて、偏らないというか欲張りっぽい印象もあるんですが、いろいろやりたがりというのがあるんですか。
新後「そうですね、音楽的な要素っていうのはいろいろあって、例えばもっとブレイクを入れてどんどん重ねていって、トランシーな気持ち良さとかも、作ろうと思えば作れるとは思うんですけど……ミニマルにしても、〈30分同じことをやろう〉と言っても、まあだいたい飽きるしな、みたいな(笑)。それより(音の)質感のほうが重要で、ガットのカチッとした音とか、ドラムのシャンシャンした音とかで全体がキラキラし出すっていう、僕はもうそれだけで満足なんです。キラキラしてて、軸のリズムが変形で、というのができていれば、それでいいかなと」
──ちなみに、曲はどうやって出来ていくんですか。
新後「最初に〈こういうのがやりたい〉っていうのが僕のなかにあって、デモみたいなのを作って、モチーフとして伝えます。それをバンドに持ち込んで、〈こうやりましょう〉って話して。それで返ってくるのが、想定しているものより良かったりするので、その場でちょっとずつ変動させていって、最終的に曲にしていきます」
──で、さっきも言っていた〈キラキラしてる〉って部分なんですけど、いろんな複雑なことや難しいことをやっていながらも、全体としてはファンタスティックでスペイシーで、曲によってはすごく多幸感があったりする、そういう世界観があると思うんですよね。〈表はとっつきやすくて、中身は複雑〉みたいな感じってあると思うんですが、そういうところで表したいものってあったりしますか。
新後「最初、結成した時に言っていたのは〈人間以外もダンスさせようぜ〉とか、〈草木も建築物もダンスしたらいいんじゃないか〉みたいなことで。自分らがホントに多幸感に包まれるようなものをやって、拡幅させるだけにしようと。ノイズとかエレクトロニカとか実験系の音楽で、直接脳みそに入ってくるような音を出してる人もいたりしますけど、そういうジャストな音というか、感情的じゃなくて身体的に何かさせるような音って、あると思っていて。その〈身体的〉な部分に繋がる音楽的な構造が〈ダンス〉だと思うんですけど、その一方で、例えば……自分にとっては、ですけど、頭のなかで〈ピチピチッ〉て鳴るような音とか、そういう音も必要だと思うんです」
──自分にとっての快感ポイント、みたいなことですか。
新後「そうですそうです。単純に耳で聴いて、音楽としての構造を知らなくても、その音が鳴っただけで、なんか変な感じになるみたいな、そういう音。たとえば濱田さんのチーンっていう音があるんですけど、そういう音も曲の構造に組み込めればいいな、というのがあります」
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