iLL 『∀』
[ interview ]
人間交差点ならぬ、音楽交差点。iLLというアーティストがスーパーカー解散後に意識していたスタンスは、もしかしたら、いくつかの音楽的萌芽や音に対する価値観がクロスするところにいることだったのかもしれない――と、ニュー・アルバム『∀』を聴いて改めて感じた。曲ごとに異なるアーティストとコラボレートした作品、と一言で紹介してしまうのはたやすいが、山本精一+勝井祐二、向井秀徳、クラムボン、moodman、ALTZ、the telephones、DJ NOBUら世代も居場所も違うアーティストたちにそれぞれ橋を渡していったようなこのアルバムからは、クロスオーヴァーさせることでクラスタ化している状況を一つに結ぼうとする思惑も感じ取ることができるし、この先にはもっと刺激的なことがあるんだというようなイメージでその序章を描いている横顔も見て取ることができる。そういう意味においてこのiLLの新作は、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの新作『マジックディスク』、そして七尾旅人の新作『billion voices』と並んで、今年最も重要な作品の一つと言っていいかもしれない。