インタビュー

INTERVIEW(1)――その瞬間瞬間で決めていく

 

その瞬間瞬間で決めていく

 

――そもそも今回のアルバムのアイデアの発端はどういうものだったんでしょうか?

「んー、まあ、単純にいままでやったことがないこと、というのを考えた時に誰かとのコラボレートというのが浮かんで。もちろん、いままでも益子(樹)さんとやったりまりん(砂原良徳)さんとやったりってことはあったわけですけど、それはプロデュースされる立場だったわけで。バンドとコラボレートしたりすることってなかったんですよね。おもしろい経験になるなあって思って。前からアイデアとして挙がってはいたんですけど、その時は、もう作ってるアルバムがあったんで……」

――それはいつ頃のこと?

「『ROCK ALBUM』(2008年)の頃とか。スケジュール的に難しくて。でも、その時はまだ具体的にメンツはあがってなかったですね」

――誰かとのコラボレーションを考えるようになったきっかけなどはあった?

「一つは、即興演奏の現場でいっしょにやることが増えたことですね。普通に曲を作って演奏していくのとは気分も違うし、実際にやってることも違いますからね」

――いちばん最初に即興をやった相手って誰だったか覚えてる?

「最初は勝井(祐二)さんでしたね。あの時は、もともと〈フジロック〉で3日間、何かやってくれって頼まれたことがきっかけだったんですけど、当時、まだこっちは曲もなくて。でも、〈フジロック〉側としては何でもいいから演奏をやってほしいってことで。それで、苗場まで下見に行って、自然をバックに何かやろうってことになったんだけど、どうせなら俺一人じゃないほうがおもしろいかな? 広がりがあったほうがいいかな?って思えたんで、勝井さんを誘って。そこから始まって作ったのが、最初の即興アルバム『Dawn~夜明け』。即興って、想像するのと実際にやるのとでは全然違うじゃないですか。それまでって決められた形で決められた尺度で演奏していたんだけど、それに対しても、もっと自由に演奏したいなって思っていた時期でもあって。ただ、即興のライヴを観に行っても、どうやって呼吸をとって、どうやって演奏してるのかまだわからなかったんですね。興味はあったけど、やってみるまでわからないっていうか。でも、実際にやってみると、想像していたよりもさらにスリルがありましたね」

――そのおもしろさを味わったことが誰かと何かいっしょにやるってことの発端だったと。それによって、コンポーズに対する意識や、実際に演奏する際の姿勢も変化しました?

「そうですね。まず、曲を作るにあたっては、曲に対して、もっと大枠を見るようになりました。例えば、曲のA地点からB地点まで行くのに、Bまでには盛り上がっていればいい曲です、という発想ですよね。それまでは、Aを離れた後、次にこうなって、その後でこういう展開があって……それでBに行く、みたいな感じで細かく決めていたんですけど、AからBまでは自由です、ただ盛り上がることは決まってるんです、というような曲作りに変わりましたよね、スタンスとして。演奏者としては、いっしょに演奏する人の音をよく聴くようになりましたね。その瞬間でしか起きないハプニングは大いに採り入れることになるわけだから、相手の鳴らす音には対応もするし、瞬時にまとめないといけないし……サッカーとかみたいに、集団でやるスポーツといっしょですよ。パスして、シュートする、みたいなのも、その瞬間瞬間で決めていくわけですから。そこがおもしろいですよね。あとは、ダラダラやらないで分数をあらかじめ決めておくとか、そのぶん緻密に音を作るとか、そうやってバランスをとっていくことになるわけで」

 

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掲載: 2010年06月23日 18:00

更新: 2010年06月23日 21:19

インタヴュー・文/岡村詩野