INTERVIEW(4)――意外に自由だよ、いま
意外に自由だよ、いま
――こういう状況って、少なくともデビューしてから10数年で初めての感覚?
「んー、そうですね。やってる本人たちはすごくいろんな音楽を聴いてて、いろんな繋がりを持ってる人たちなんですよね。そういう状況は本当にいまがいちばんかもしれない。ただ、聴いてる人たちにそれが伝わっていないとは思う。あとは、ちょっと手を加えて、わかりやすく見せていけばもっとおもしろさが伝わると思うし。実際、いまの20代より10代のほうが何の偏見もなく、いろんな音楽を聴いている。そういう状況を見た時に、〈あ、大丈夫かな〉って気付きましたね。まあ、そもそも細分化していくのは些細なことで。だって、ダンス・ミュージックとロックの融合とかって、いまさら騒がなくても、もう、ここには融合されたものがあたりまえのものとしてあるわけで。僕らも、音楽のスタイル関係なく〈コイツ、ハードコアだよね〉とか〈ポップだよね〉って感覚で選んで聴いたりしてる。別にハードコア・パンク・バンドをやってなくてもね。で、それを10代は普通に聴いているわけで。僕としては、〈もうそれでいいじゃん。こっちはそろそろその先が見たいんだよ、意外に自由だよ、いま〉ってそんな気持ち。そこで、自分に何ができるのか?ってことなんです」
――社会的に見ても、かなり開かれてきてるという実感が、音楽シーンの在り方にも出てはいるかもしれないですね。では、ナカコーとしては、そのなかで、次にどういうことをやっていこうとしてます? 例えば、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文くんは、〈2010年代はまた言葉の時代ではないか?〉というようなことを話してくれていて、実際、彼らの新作は言葉のウェイトが大きな作品でもあるんだけど。
「まあ、言葉の話で言うなら、言葉なんて要らないって方向と、メッセージが重要って方向のどっちかに行ってしまうのがいちばん良くないというか、どっちかにならないほうがいいかな。フィフティー・フィフティーでいたほうがいい。〈(アジカンの作品が)言葉のアルバムになった〉というのは、根本ではそういうフィフティー・フィフティーの感覚を持っているからいいわけで。言葉が強くなければダメだ、音が強くなければダメだ、というのがいちばんもったいない。〈ダメ〉はないわけですよ。僕も、何をするにしても、どういうことをやるにしても、そのあたりは柔軟でいたいっていうか。まあ、もう、フリーターで悩むような時代ではなくて、フリーだったら自由ってことじゃん?って時代の空気があるわけだから、自由にやればいいわけで(笑)」
――ある意味、楽天的な姿勢でいるほうがいいということでもあるかな。実際、今回のアルバムも全体的にオプティミスティックな空気で貫かれてる印象だし。
「うん。そうかもしれない。でも、いまの若い世代は知らず知らずのうちにその空気がわかっていますよね。だって、こないだも、無名の高校生がダブステップを作った!って話題になって、聴いてみたら本当におもしろくて。ああ、こういう時代なんだなって。そういう意味では、今回のアルバムはイレギュラーじゃないですね。〈そんなのアリ?〉みたいなものがこれまででもっとも出てるし、でも、それまでの流れを受けた作品で、自分じゃなきゃ出来ない作品でもあるしね」
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