INTERVIEW(1)――DJツール的なものは排除した
DJツール的なものは排除した
──大変に素晴らしいアルバムで。感動しました。
「ほんとに? ありがとうございます。感動させるような音楽じゃないけどね(笑)」
──でも予想以上に時間がかかりましたね。
「作業自体はそんなにかかったわけじゃないんだけどね。InKとか電気(グルーヴ)とかやってて、なかなか自分のをやる時間がなかっただけで」
──6年の間にいろんなことがあったと思うけど、自分としていちばん大きな変化は?
「うーん……6年間にやってたこと(電気やInk)も大きいし、自分のことも周りのことも、挙げればキリがないんだけど。聴かれ方も変わったし、売られ方も変わったし、すべての音楽が。こうやって紙にならないインタヴューをやる機会も増えてるしさ。キリがないよね。逆に言うとすべてが変わって、変わってないことのほうが少ないかな」
──変わってないことは?
「いまだにメジャーからリリースを続けていること。あとは……相変わらずあぜ道的な部分でやってるっつーかさ(笑)。メインストリームじゃないところで(笑)」
──でも、電気をやって、ポップの最前線に戻って一通りやってきたわけでしょう。そこで得たものは何かありましたか。
「最前線とは思わないけど、やってみてあきらかに変わってたね、ポップスの世界ってものが。新陳代謝もしてたし。そんで、売れようと思って媚びを売っても売れるものじゃない、もはや。90年代とかはまだ売れる法則があったと思うんだけど」
──曲の作り方とか。
「うん。ここをこうすればキャッチーと言われるとかね。キャッチーにすることによって、ポピュラリティーも上がるっていうのがあったと思うんだけど、いまはそれがあまりない。うちらがやることでもないしさ。うちらの持ってる術ではできないっていうか。あるんだろうけど、やり方は」
──今回ソロを作るにあたって、そこからフィードバックされたことはあるの?
「うーん、ポップス的な部分で仕掛けていこうというのは最初からあんまりなかった。あとクラブ・トラックスとしても、DJツール的なものは最初から排除したっていう。こういう形態(CDアルバム)で出すなら、あまり意味がない。アナログを切るとか、配信で1曲だけ出すとか、そういうのだったらDJツール的な業務用のものも意味があると思うけど。そっちもおもしろいし興味もあるけど、それをやるなら違うリリースの形でやる」
──でも今作は〈ツール〉っていうほどドライではないけど、すごくダンス・ミュージックとして機能的にできてると思うけど。
「うん、DJツールをいくつか組み合わせてミックスして曲にした、みたいな考えかな。そのぶんとっつきやすい。聴かれる場所も、クラブもそうなんだけど、それ以上に携帯プレイヤーとか、家で聴くほうが圧倒的に多いわけでさ。そこを意識するとこうなっていくっていう」
──携帯プレイヤーの普及っていうのは6年間でいちばん大きな変化かもね。聴取のスタイルの変化。ステレオ持ってなくて携帯プレイヤーだけ持ってるって子、すごく増えたでしょう。
「うん。6年前に出したときはCCCDだったしさ(笑)。そもそも携帯プレイヤーに入れられないっていう(笑)。やっぱりそういう意味で〈聴かれる場所〉っていうのは意識するからね。だからDJツール的なものをやる気はまったくなかった」
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