インタビュー

INTERVIEW(4)――ヌケの良さを表現したい

 

ヌケの良さを表現したい

 

──今回その〈表現したかったもの〉とは?

「気持ちのなかでの解放感というかヌケの良さというか。ジャケットとかタイトルもそうなんだけど、あまり密室的じゃない。過去のやつって密室的な気分がすごく強かったと思うんたけど、なるべくそういう気分にならないように自分を持っていって作ったから」

──今回は大バコ向けのアンセムみたいな曲がないでしょう。もっと小規模なハコで密度の濃い音で鳴らしてる感じ。だから解放感というのとはちょっと違う印象もありました。

「ああ、うんうん。作ってるほうはね。作った音楽が使われる場所とはまた別でさ。解放的な気分で密室的な曲を作るっていう(笑)。確かに、特に1曲目とか野外で映える曲とは思ってないんだけど、でも作る段階では解放的な気分で作ってたから」

──ジャケットの鳥の写真もそういう解放感を表してますね。自分で撮ったとか。

「そうそう。たまたま熱海で撮った写真。しっかりしたヴィジュアル・コンセプトがあったわけじゃないから、中身を象徴するというよりはヌケの良さを表現したいと思って」

──これまでのジャケとは全然雰囲気違うね。

「そうそう。だって毎回どんどんハードルあがってっちゃってさ(笑)。電気のアーティスト写真と同じで」

──ヘンなことやりすぎて(笑)。

「そうそう。最後はもう○○写真か××のドアップしかないっていう(笑)。そこまでいきたくないからさ。でもこれだけ配信が主流になってくると、よりジャケットって大事になってくるよね。手触りとかさ。パッケージへのこだわりは、やっぱりあるから」

──テクノに対するこだわりも、すごくあるわけでしょ。

「うーん……でも、いまテクノって言ってもね、人によって捉え方が違うから。だからテクノってオレから言うと、たぶん思ったのと違うふうに伝わるんだろうなと。だって、ちょっと前のハード・ミニマルみたいなのをテクノっていう人もいればいまだにピコピコって言う人もいるじゃない? 幅がありすぎて。なんて呼ばれてもいいんだけどさ」

──以前取材したとき、テクノでもダンス・ミュージックでもどうでもよくて、ただ聴いてて気持ちよければいいって言ってたけど。

「ダンス・ミュージックっていうこだわりはあるかな。間口が広いから誰でも入ってこれるし、自分も好きだしね」

──ダンスするのに気持ちのいいリズムとかグルーヴを突き詰めていって今回のアルバムになったんだろうけど、今回のストイックでミニマルな感じは、いまならではの音だと思いました。

「ああ、ありがとうございます」

──『BERLIN TRAX』に似ているとは言っても、あれはあの当時の音だし、今作はいまの音になってる。その違いがなんなのかと言ったら、時代の空気感みたいなものかな。

「そうそう。それは細かいとこを具体的に挙げようと思えば挙げられるんだけどさ、それって分析になっちゃうでしょ。それよりも、その時の空気、時代の風向きみたいなものを読むのが、DJの仕事でもあるからね」

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掲載: 2010年08月18日 18:00

インタヴュー・文/小野島大