インタビュー

INTERVIEW(3)――ふざけを抜くのは結構大変

 

ふざけを抜くのは結構大変

 

石野卓球_A

──なるほど。今回の曲はいつ頃作ったんですか。

「断片的には6年前のソロ終わってから作ってたんだけど、何十曲もあっから、それを同時進行的に進めていって、だんだんふるいをかけるうちにアルバムの方向性がわかってきて。まとめあげたのは6月ぐらい。実質的な制作期間はひと月半ぐらいかな。あんまりダラダラやるのはやめようと思って。前みたいに丸2日間スタジオに籠もるとかさ。午前中に起きて、お昼から始めて夜には終わる。で、毎日スタジオに入らない。毎日入ると客観性なくすから。で、前回やったプレイバックを聴きながら次にやることを書き出して、やることこなしてから、残りの時間を次の作業に使って。そうやってると集中力が途切れないから。ひとりでやってると、集中力が途切れたとき取り戻すのが大変だし、煮詰まるとそこから抜け出すのに時間がかかるから、なるべくそういうふうにならないようにコントロールすると、規則正しい生活になる(笑)」

──電気グルーヴを長いことをやってなかった時期は、電気の作品としてまとめあげることが壁になってたと思うんだけど、電気やり終えたら、今度は逆にソロの作品としてまとめるのが壁になったということはない?

「あるある! ソロから電気にいくのは結構簡単なんだよね。なぜかっていうとふざければいいから(笑)。ふざけモードにするのは簡単だけど、でも2年間ふざけまくって、そのふざけを抜くのは結構大変なんだよ!」

──(笑)真顔に戻るのが。

「そうそうそうそう。ふざけ癖が残っててさ(笑)。それが結構大変。あと、ふたりの作業──相手が瀧、とはいえ(笑)──だから。歌が乗る前提で作ってたり、歌でなんとかなるかなと保留にしちゃったり。そういうのが抜けなくて最初が大変だった」

──ある種の制約が電気にはあって、それが創作のモチベーションになる。でもソロだとフリーハンドだから。

「そうそう。年が明けてから作業始めて、最初はあまりにフリーハンドすぎて。好きにやってくださいって言われたらいちばん大変じゃないですか。それでどっかしら削っていかないと、ってところから始めた。それで出てきた結果が、さっき言ったようにポップスの部分とDJツールの部分はやめようっていう。それがはっきりしてから、作業は速かったんだけど。そこにいくまでは大変だった。最初削ぎ落とそうと思ったら、削ぎ落としすぎちゃってさ。そしたら幹しか残らなかった。それはさっき言ったDJツールよりもさらに部品っていうか、サンプリングCDみたいになっちゃって(笑)。さすがにこれはないなと。まず必要なものだけ足していこうと思って足していったんだけど。そのころが自分のなかでいちばん不安だった時期で。毎日スタジオに通うんだけど、全体の方向が見えないままやってたからさ。いまやってる作業が果たして正しいのかどうかわかんないままやってて。毎日スタジオに、発売延期の言い訳を考えながら通ってたりしてさ(笑)。夏休みの宿題やってない言い訳考えてる小学生みたいに(笑)。でもそれをやっていくうちに曲数も絞られてきて、どういう方向でいくのかも見えてきたから、そこからはすんなり行ったけどね」

──6年の間に外的にも内的にもいろんな変化があったと思うけど、音の好みはすごく一貫してると思いました。

「うん、それは変わらないかな。もともと、その都度のトレンドを採り入れて、ってタイプじゃないから。機材も変わってないしね、ここ数年で。作り方はちょっと変わったところはあるけど。あと、これはやめようっていう、禁じ手みたいなものは多少あったけどね。TB-303をなるべく使わないとかさ」

──へえ。なんで?

「ちょっと今回はいいかなと思って。303好きだからさ。使い出すと全部そっちにいっちゃうんだよね(笑)。あと、細かいところに気を取られて、木を見て森を見ないのはやめようと。たとえばTR-909とか、ここ10年ぐらい加工しないで使うのはすごくいやだったんだけど、そこはどうでもいいというか、もっと気を遣うところあるだろうと思うようになった。それを使って何を表現するかっていうのが大事だからさ。前は加工すること自体に気を取られてるところがあったから」

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掲載: 2010年08月18日 18:00

インタヴュー・文/小野島大