インタビュー

INTERVIEW(2)――時代のBPM

 

時代のBPM

 

──この6年間、自分のパーティーをはじめ、クラブの現場からずっと離れずやっていたわけだけど、そこで見ていた変化っていうのはどんなものでした?

「いろいろあったよ。クラブの現場だけじゃなくてさ、ポップのマーケットでもPerfumeみたいなエレクトロがあたりまえになってきて。すっごい大きな括りでいうエレクトロニック・ダンス・ミュージックみたいなものが普通になってるじゃん、もう。そこがずいぶん違うところだね。こっちはそれを苦々しく思うってことはまったくなくて、むしろすごくやりやすくなってる。だって免疫できてるわけだからさ。聴く人にとって。クラブ行く行かない以前に、クラブ・ミュージックに対する偏見というか取っつきづらさみたいなものはまったくなくなってる。それこそレディ・ガガとかさ(笑)」

──それはパーティーで回してても感じるわけ?

「うーん、おれのパーティーの場合はちょっと別だけどさ。もっと若い子、20代前半の子が行くようなエレクトロのパーティーは完全にそんな感じだよね」

──Beatportとか見てても、いまはエレクトロ系が多いもんね。そこらへんの状況の変化が、自分のいるテクノのフィールドとは違うところで起きてるっていう。

「うん、あるね。昔はそういうのも屈託なくかけてたんだけど、いまはちょっとエレクトロやめようと。なんかちょっと冷めるっていうか。振り幅として、ここまでOKにしてたんだけど、もうちょっと絞ってもいいかなと思って削ったところはある」

──そもそもエレクトロはあなたの得意とするところでもあったでしょう。

「でもエレクトロっていってもいっぱいあるからさ。ディストーションがかかったシンセがビリビリ言ってるようなやつとか」

──ジャスティスみたいな。

「うん、オレにとっては若すぎるっていうか(笑)。オレがやんなくてもいいじゃんっていう。もうちょっと別のところに興味があるから。ビートだったらもっとハウスぽいやつが好きだし。かといってハードなテクノみたいなのもあんまり興味なくて。そうなってくると、自分の守備範囲もおのずと定まってくるじゃん。そのなかでも広いほうだとは思うけど」

──うん、そうだね。前のアルバムっていろんなことやってたけど、今回はすごく焦点が絞れてる。聴いた印象としては『BERLIN TRAX』にいちばん近いかな。

「うん、そうかもしれない。考えとしては近いですね。なるべく統一感がありつつ、そのなかのヴァリエーションで考えるっていう」

──じゃあ最初からコンセプトが定まった状態で作った?

「いや、そういうわけじゃなくて。だいたいこういうもの──ビートはこれぐらいのテンポで、これぐらいの振り幅で──っていうのは作ってる途中で決まってきて」

──以前はBPM133ぐらいだったけど、今回はもっと遅いね。

「125ぐらいだね。130越える曲は速すぎて作れない。そういう気分じゃない。だいたい125から128ぐらいだね。テンポが落ちたっていうのは、世界的に見てもあるよね」

──テンポを落としてもっとグルーヴを感じさせるような。

「うん、そうだね。もうちょっと前だと、もっとハードな感じでもお客さんのところに届いた感じがあったけど、いまはもうそれだと無理だよね。ブースで一人で必死にペダル漕いでる感じっていうかさ(笑)。滑稽というか。その時その時によってあるじゃないですか、時代のBPMっていうかさ」

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掲載: 2010年08月18日 18:00

インタヴュー・文/小野島大