sleepy.ab “かくれんぼ”
[ interview ]
メジャー・レーベルへ移籍後、バンド史上初となるシングル“君と背景”を6月にリリースし、新しい季節の始まりを告げたsleepy.abから届いた冬のニュー・シングル。“かくれんぼ”は、明るく開かれたポップさを持つ“君と背景”と対を成す、冷たい静けさのなかにほのかな温かさを感じる美しいスロー・ナンバーだ。インディーズ時代からいまもずっと札幌に住み、流れの速いJ-Popの喧騒から遠く離れたsleepy.abの音楽は、心を癒す凛とした叙情を奏でながら、あなたに聴かれるのを待っている――。
生々しさを意識した
――今年はツアーもイヴェントも含めて、まんべんなくライヴをやっていた印象があります。
成山剛(ヴォーカル/ギター:以下同)「そうですね。それと並行して、次の作品に向けてのレコーディングを春と夏にやって、夏はフェスにけっこう出させてもらって……ずっとやってますね。東京にもずっと来てましたし」
――初夏には、アコースティック編成のツアーもありました。
「そうか、全国ツアーを2回やったんだ。それでいま、3回目をやってるんですね。sleepy.acのツアーは次の作品にも繋がると思うし、自分たちにとってすごくプラスになったなと。歌というものが再認識できるツアーだったと思います。9月にはライヴCD『sleepy.ac「LIVE@Sapporo Kitara」』も出しましたし、振り返ってみるとけっこう忙しい年ですね」
――ニュー・シングル“かくれんぼ”は、アコースティック・ツアーの時にやってました?
「やってないです。ちょうどツアーの時に制作してました。ギターの山内が骨組みを作ってきて、その時点でこれは雰囲気がいいなと思っていたので、〈ちょっと預けて〉みたいな感じで作った曲です。そのメロディーに寄せて、また変えてもらったりして」
――ストリングスとバンド・サウンドの混ざり方が絶妙ですけど、弦楽器が入るイメージは最初からあったんですか。
「初めの時点ではなかったんですけど、録ったあとに〈これ、弦合うな〉と思って、〈入れたいね〉みたいな感じで。やっぱり心強いですよね、弦は。震わせてくれる感じの楽器なので、みんなワッと昂揚する感じ。sleepy.acのツアー・ファイナルは札幌のKitaraというクラシック・ホールでやったんですけど、その時はダブル・カルテットで、すごく合うなというのもありましたし」
――“かくれんぼ”の歌詞はどんなふうに? 時間はかかったほうですか。
「時間かかりましたね。毎回そうなんですけど。いちばんはじめにあったのは、〈本当は誰にも言えなかったんだね〉とか、〈最後に言いかけた言葉教えて〉とか、そのへんが出てきて、そこから作っていきました」
――珍しく……とか言うとアレですけど、現実的な風景がパッと浮かぶ描写というか、叙情的なロスト・ラヴソング、というふうに聴こえたんですよね。あまり比喩を使わない感じで。
「ああ、そうですね。それはすごく自分で意識したかもしれないです、生々しさみたいなものは。もっと近付くイメージというか」
――最近、そういうアプローチを意識している?
「その前に出した“君と背景”というシングルがあるんですけど、それは自分たちのなかでも1枚目のシングルということで、〈自分たちが思うポップとはどんななものか?〉ということを出せた作品だったんですよ。自分たちには、ちょっとした人懐っこさみたいなものがあったりするんですけど、そういうものが自然に出せた曲でもあったし、光の量が多い曲だったなと思っていて。キラキラしたイメージがあったので。詞で言うと〈走り出す〉とか、そういう動詞があって、それにつられるようなイメージがあって、それをうまく音にできたなと思っていて。それに対して今回はすごく〈問いかける〉というか、〈そうだよね?〉っていう、近さみたいなものをすごく意識していて。この詞は恋愛的なものとしても捉えられると思うんですけど、作ったあとに、〈本当は誰にも言えなかったんだね〉とか、昔の自分に問いかけているような、そんなふうにも捉えられるなと思って、自分が言われたかった言葉なのかなとか、そんなふうにも思ったり」
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