インタビュー

LONG REVIEW――sleepy.ab “かくれんぼ”

 

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ポップ・ミュージックの世界では、いつの間にか〈冬=バラードの季節〉ということになっている。〈冬を彩る一曲〉とか〈温かなバラード〉とか、そういう紋切り型の形容を見かけることも多い。でも、ふと立ち止まって考える。音楽が〈温かい〉というのは、どういうことなんだろう? 別に鳴っている音自体に、何らかの熱量が宿るわけじゃない。別にバラードを聴いたからって身体が温まるわけじゃない。音楽はマフラーやセーターのようなものじゃない。

それでも、sleepy.abの鳴らしている音を聴くと、確かな〈温もり〉を感じる。そこに嘘のない温かさが宿っているのを感じるのだ。きっとそれは、彼らが拠点である札幌から離れずに音楽を発信してきていることが大きいのだろう。北海道に暮らしているからこそ感じる温度感、色彩感、風景。そういうものが、メロディーや音色や曲の細部に分かちがたく息付いている。アイスランドやノルウェーのミュージシャンが鳴らす音楽にも通じるところのある、凛とした透明感。そしてふわりと聴き手を包み込む毛布のような感触がある。

メジャーからのセカンド・シングル“かくれんぼ”は、〈本当は誰にも言えなかったんだね/怖くなって〉と、誰もがそっと心のなかに押し留めている弱さを〈かくれんぼ〉のメタファーでなぞる一曲。幾重にも重なるギターのレイヤー、そして〈一人一人が孤独を支えているんだね/みんなそうだよ/そっと誉められたかっただけなんだ〉という歌詞の言葉が、ゆっくりと染みてくる。sleepy.abの音楽が〈温かい〉と感じるのは、きっとそれが優しく心の隙間を埋めてくれるからなんだろう。そう思う。

 

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掲載: 2010年11月17日 18:00

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